Nature AOP, published online 20 June 2002; doi:10.1038/nature00870
Pluripotency of mesenchymal stem cells derived from adult marrow YUEHUA JIANG*†, BALKRISHNA N. JAHAGIRDAR*†‡, R. LEE REINHARDT§, ROBERT E. SCHWARTZ*, C. DIRK KEENE, XILMA R. ORTIZ-GONZALEZ, MORAYMA REYES*, TODD LENVIK*, TROY LUND*, MARK BLACKSTAD*, JINGBO DU*, SARA ALDRICH*, AARON LISBERG*, WALTER C. LOW, DAVID A. LARGAESPADA & CATHERINE M. VERFAILLIE*‡
この論文はBMCから10の36乗に増えてもまだ増え続ける幹細胞株を樹立できることを示し、その細胞株をもとに、BMCにpluripotencyがあるということを証明したということに要約されると思います。
骨髄細胞のpluripotencyについては、たくさんの報告があるし、自分自身でもgreen mouseのBMCをラジエーションなしで尾静注して、8週後に観察すると全身に驚くほどたくさん分布するのを見てたので、あっそうという感じなのですが、前段の株細胞を樹立したというところはすごいです。
私が論文にもならないながら似たようなデータを持っており、このグループがNature articleに発表することになった根本的な違いはセルラインの確立をしてからなのか、適当に打ってしまうのかという出発点の違いにつきます。私のは砂上の楼閣で彼らのはきっちり土台ができた上での研究であるといえます。とはいえ、この土台は細胞培養が本職ではない私には神の啓示があったとしても、もなかなかできなかったに違いありません。培養液にLIF, EGF, PDGF-BBをいれてFNコートのディッシュに撒くのだそうです。私なら、成功するかどうかわからないままに、これらの濃度や組み合わせを考えられるのかと自問すると、答えは明らかにNoですね。参りました!
この幹細胞株を彼らはMAPCと呼んでいます。特徴はc-kitやMHCのクラスIやII、CD45などが軒並みネガであることです。これって(ヘキストなどで染まらない)SPフラクションの細胞とかさならならないんでしょうか?
この細胞をES細胞のようにブラスシストに注入する(ふつうは10−12コをいれ、1コを入れても効率は下がるがキメラ作製は可能)ことによりキメラを作製しています。体のほとんどの細胞に分化するそうで、精巣内にも分布している書かれていますが、子孫になるのかどうかはまだ不明だそうです。(マウスで子供まで待ってると時間がかかりますからねえ。待てなかったんでしょうねえ。)でもおそらく今頃はわかってるでしょうね。
このMAPCはヒト、マウス、ラットといろんな種類からとれ書いてあるのでES細胞の樹立程度の難度で可能なのかもしれません。そうだとすると私たち各自のMAPCを樹立することにより、相同組換えで遺伝病を治療したり、心筋梗塞などになっても幹細胞の移植で助かるということになるのでしょうか?そういう夢を与えてくれるというだけでもインパクトは絶大ですね。
最近CNSに2年半で17報ってヒトの話があったので、この論文も読む前はちょっと疑ってたのですが、これは間違いないと思いました。追試の成功が待たれます。 |