2008年06月23日10時59分
全ろう者用の教習を準備する千葉県自動車訓練所=千葉市若葉区坂月町
六月一日の改正道交法の施行で、全く耳の聞こえない人(全ろう者)も普通自動車免許の取得が可能になったが、県内で受け入れ態勢を整えている教習所が一つもないことが二十二日、分かった。受け入れ自体を検討していない教習所も約半数に上る。法改正に現場が追い付いていない現状に県聴覚障害者協会は「免許取得の機会を平等にしてほしい」と早急な対応を求めている。
県警免許課によると、全ろう者を受け入れるには、聴覚障害者用の教習を行う必要がある。県内の指定自動車教習所は五十九カ所あるが、同課から教習内容の確認を受け、受け入れ準備が整っている所は一つもない。受け入れ条件が判明したのが五月中で、時間のかかる全ろう者用の教習スペースが確保できていないとの理由が多く、受け入れ自体を検討していない教習所も約三十カ所に上っている。
受け入れには、コース上に「警笛ならせ」の標識がある見通しの悪いカーブを作り、相手のクラクションが聞こえない全ろう者に走行時の注意を指導したり、ワイドバックミラーでの後方確認の仕方を身に着けさせるなど、専門の教習課程を実施しなければならない。
受け入れを検討していない教習所の一つは「コースが狭いため、(専門の教習課程を実施すると)一般の教習がスムーズにいかなくなる恐れがある」と理由を説明。受け入れ準備を進めている千葉市内の教習所でも「施行直前の五月に受け入れの条件が示されて、六月一日に間に合わなかった。現状ではコースにゆとりがなく、聴覚障害者と一般の教習が同時にできない」と対応に苦慮している。
「手話ができる教官がいない」との理由で受け入れに消極的な教習所もあり、県聴覚障害者協会は、相談があった教習所には手話通訳者を派遣するなどの取り組みも考えているという。
同会は「耳が聞こえなくても注意して運転すれば安全は確保できる。免許を取りたい全ろう者は多い。受け入れ態勢が整っていない状況を改善してほしい」と訴えた。免許を取れる車種が普通自動車に限定されたことについても「トラックなどを使う仕事ができない」と指摘し、法令自体の内容にも問題があるとした。
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