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FMG/M2研究会・研究ノート

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FMG「M2研究会・研究ノート」
第U章 近代現代の文明・社会・経済制度・人間の問題点
Uー(3)「人間」

∞∞∞

U―(3)―@ 「ユダヤ人とは誰か」
          アーサー・ケストラー著 宇野正美訳 三交社刊 1990年


●「真のユダヤ理解が国際化の鍵

   〜二つのユダヤ――スファラディとアシュケナージ」(訳者序文からの紹介)

1.日本は国際化しなければならないと言われて久しい。しかし国際化する前に日本人がまず国際人とならなければならない。国際人になるためには世界のタブーを知らなければならない。
 世界には多くのタブーがあるが、そのうち最も典型的なものはユダヤ問題である。
 日本人は「ユダヤ」というと、すぐにキッシンジャーやブレジンスキーを思い出す。さらにはイスラエル建国の父と言われるベン・グリオン、コルダ・メイア、「第三の波」の著者アルビン・トフラー、「ジャパン アズ ナンバーワン」のエズラ・ボーゲル、「21世紀は日本の世紀」のハーマン・カーン、「新しい現実」のP.F.ドラッカーなどを思い出す。
 そして日本人の多くは、ユダヤ人というかぎりは旧約聖書に出てくるアブラハム、イサク、ヤコブの子孫、その血統を今も受け継いでいる人々と考えている。
 しかしながら日本人が接しているユダヤ人は旧約聖書のユダヤ人とはまったく関係のない人である。

2.我々がユダヤ人と思っている人々はいったい誰なのか。
 それは今から1,000年以上前、中央アジアにいた、そして血縁的にはユダヤとは何の関係もないカザール人だ。
 本書が証明するところであるが、彼らは一方ではキリスト教・ビザンチンから圧迫を受け、他方ではイスラム教・アラブの圧迫を受けた。普通ならどちらかに荷担してしまうものなのだが、カザール人たちはユダヤ教に国家を挙げて集団改宗した。
 彼らは改宗することによって、自らを「ユダヤ人」と称するようになった。後に蒙古軍=元軍が東から中央アジアの草原に進撃し始めた頃、ユダヤ人と称するカザール人たちはその難を避けて北へ移動していった。そしてロシア、ポーランド、ドイツなどに定住するようになった。

3.一般の百科事典にはユダヤ人には二つの種類があると書かれている。一つはアシュケナージのユダヤ人、もう一つはスファラディのユダヤ人である。
 アシュケナージ・ユダヤ人については、ロシア、ポーランド、ドイツなどの東ヨーロッパにコミュニティーをつくっていた人であり、ロシアのポグロムやドイツのホロコーストなどで迫害されて西ヨーロッパ、アメリカなどに移住していった人々だと書かれている。実はこのアシュケナージ・ユダヤ人こそ、もとはカザール人であった人々だ。
 一方、スファラディ・ユダヤ人とは、一部は混血しているとはいえ、彼らはアブラハム、イサク、ヤコブの子孫なのである。1492年までスペインにいたが、カトリックの力が強くなり、国外追放によりスペインを後にして主にはジブラルタル海峡を渡って北アフリカへと移住していった。オランダやフランスの南部、さらにはブルガリア地方へ移った人もいる。本当の血統を受け継ぐユダヤ人(スファラディ)の多くは、北アフリカのアラブ民族の中に根を張ったのだ。

4.1948年5月、イスラエルが再建されるのだが、その原動力となったのはカザール人(アシュケナージ・ユダヤ人)であった。彼らが経済的、軍事的力をそれに注ぎ、世界的な彼らのネットワークを利用した。そして建国後、イスラエルに帰ってきたのが、スファラディ・ユダヤ人達である。したがって、日本人はイスラエルに行かないかぎり、血縁的に正当なスファラディ・ユダヤ人を見ることはあまりない。イスラエルの人口の半分近くがアシュケナージ、残る半分がスファラディである。イスラエルの建国まで、このアシュケナージとスファラディはまったく別の世界の中で生きてきた。現にヨーロッパなどにおいても、アシュケナージとスファラディでは、シナゴーグ(ユダヤ教会堂)もラビ(ユダヤ教師)もまったく別である。
 このように血縁的に見るとユダヤ人の中にまったく混じりあうことのない二つの民族を見ることができるわけである。

5.現在ユダヤ人と称する人々は全世界に1,500万人いるとされている。そしてそのうちの90%をアシュケナージが占めており、残り10%がスファラディであるとされている。
 イスラエルにおいては政治を主導し、企業家として成功し、弁護士として名を成し、あらゆる研究機関を牛耳っているのはアシュケナージ・ユダヤ人である。それに対して本当のユダヤ人の血統を継ぐと自負するスファラディ・ユダヤ人達は、ほとんど下積みの仕事に就かせられている。軍隊においても司令官はほとんどがアシュケナージ、それに対してスファラディは危険な最前線に追いやられている。
 カザール人について知ることにより、一般では決して知らされない、このようなイスラエル国内での現状がいよいよ明白になってきた。ユダヤ問題の複雑さと、そのタブーが見えてきたわけだ。


●ユダヤ人とは民族ではなく宗教集団

1.ユダヤ人とは民族を指していないことは明らかである。なぜなら血縁的にまったく関係のない二つの民族が、ともにユダヤ人と称しているからである。では、ユダヤ人とは何か。それは宗教集団、宗教グループと考えればよい。
 日本では、ユダヤ教は旧約聖書から来ていると考えられている。そして多くの人々は、キリスト教とは旧約聖書だけではなく新約聖書も神の言葉とし、イエスを旧約聖書に書かれている通りの救世主すなわちメシアとするもの。そしてユダヤ教はイエスはメシアではなく、まったく別のメシアがユダヤ人のためにやって来ると信じているものと考えている。
 しかしこれはまったく異なる。ユダヤ教は旧約聖書を母体にしているのではなく「タルムード」が源泉なのである。
 確かにユダヤ人たちは旧約聖書、中でもモーセ五書といわれる「トーラ」を読んでいる。しかし彼らは色眼鏡をかけて読んでおり、旧約聖書そのものを読んでいるわけではない。「タルムード」という色眼鏡である。「タルムード」が書物の形になったのは紀元後であるが、タルムード的影響はすでにイエスのいた時代に存在していた。タルムード的影響の出発点はバビロン宗教までさかのぼる。

2.紀元前586年、バビロンによってユダヤ王国は崩壊し、彼らはバビロンに連れていかれ、長く捕囚の身に置かれた。後に解放されてイスラエルに帰ってくるが、かつては旧約聖書のみを信奉して彼らが、バビロンの宗教の影響をもろに受けていた。それがやがて「タルムード」という形をとっていく。
 「タルムード」は、ユダヤ人は特別な選民であると強調する。そして自分達だけが人間で他の民族ははるかに下等の者であると繰り返し述べている。「タルムード」は他の民族すなわち異邦人を「ゴイム」と言っているが、それは単なる動物という意味ではなく、彼らの軽蔑する「豚」という響きをもっている。
 イエスはこのバビロン宗教の影響を受けたユダヤ人、中でもその指導者を徹底的に糾弾した。新約聖書にその様子が記録されている。パリサイ人、律法学者とはその当時のユダヤ人の指導者を指した言葉である。糾弾されたパリサイ人や律法学者達はイエスを憎み、かつ妬み、やがて十字架刑に追いやった。新約聖書とは旧約聖書そのものの立場にたつイエスとタルムード的発想になってしまったユダヤ人指導者との対決の記録とも言える。

3.それから40年後の紀元70年、ローマ帝国によってユダヤの国は完全に崩壊した。ユダヤ人達は全世界に散らされたが、パリサイ人や律法学者と言われるユダヤの指導者達は再びバビロンの地へと帰っていった。そして約500年の歳月が流れて、そのバビロンで「タルムード」は書物の形をとるようになった。
 中央アジアにいたカザール人達がユダヤ教に接触したのはそれ以後のことである。したがって彼らは旧約聖書を知ったのではなく、「タルムード」に接した。「タルムード」という色眼鏡をかけて後、旧約聖書を読むようになった。
 アシュケナージ・ユダヤ人は、自分達にとって何よりも大切な経典は「タルムード」だと言ってはばかることはない。
 自分達だけが人間であり、他の民族は動物であるとする彼らを、後にマルチン・ルターは批判して次のように言っている。
 「彼らの『タルムード』は、ユダヤ人が異邦人を殺しても殺人罪にはならないが、ユダヤの同胞を殺すなら罪になると書いてある。彼らが異邦人との誓いを守らなくても罪にならない。それゆえに彼らが高利貸しをしてうまくやっているように、異邦人から盗んだり奪ったりすることは神への奉仕であると考えている。ということは、彼らは高貴な血の割礼を受けた特別な民族であると思い込んでいるのだ。」

4.なぜユダヤ人達はヨーロッパで迫害を受け、ユダヤ問題はタブーとなったのか。このマルチン・ルターの言葉によって明白である。
 宗教集団が、自らが絶対であり他の民族が劣等であると考え出したなら、当然摩擦が起こる。しかしその摩擦は現在においてもヨーロッパさらにはアメリカにおいて厳然として存在する。
 特に第二次世界大戦中、アシュケナージ・ユダヤ人達は、ドイツから激しい迫害を受け虐殺もされた。それゆえ戦後彼らは、自分達は哀れな民族であり迫害され続けた民族だということをキャッチフレーズにするようになった。なぜ迫害されるようになったのかを彼らは隠した。しかし欧米人達はその理由を知っている。知っていても、それに触れるなら反ユダヤとしてマスコミで非難され叩かれるために、彼らは口に出さない。それゆえにユダヤ問題はタブーなのである。

5.宗教集団がその信条を世界の片隅で守っているなら何の問題もない。しかしユダヤ人の場合は、マスコミは言うに及ばず金融、政治、経済に至るまで甚大な力を世界的な規模で持つようになった。そしてその波はすでに日本にまで及んでいる。
 それゆえ日本人が国際人となるためには、このユダヤ問題というタブーを欧米人達が理解しているように理解しておかなければならない時期が来ている。

6.欧米人達が宗教的衝突の中で血を流したことは残念である。日本人がそれを真似る必要はどこにもないが、真実を知っておくことは今の日本および日本人にとって最も大切なことではないか。


●ケストラーはユダヤのタブーに挑戦した

1.本書の著者、アーサー・ケストラーはハンガリーで生まれたアシュケナージ・ユダヤ人である。彼の著書には「スペインの遺書」、「真昼の暗黒」、「見えない手紙」、「夢遊病者」、「コール・ガールズ」、さらにニュー・サイエンスの「機械の中の幽霊」、「ホロン革命」等がある。
 彼は、*1905年 ブタペスト生まれ
     *1922年 ウィーン大学に入学、シオニズム政治に関与
     *1926年 パレスチナ訪問し、シオニストとして活動開始。
       (シオニズムとは
ユダヤ人が住んでいたシオンの丘〔現在のイスラエル〕を奪回して、そこに自分の国を造らなければならないという運動)

2.この頃、先祖がカザール人であるアーサー・ケストラーですらシオニストとして運動に熱心であったことがわかる。
     *1945年 「ロンドンタイムズ」の駐パレスチナ特派員として建国前のイスラエルに滞在。
     *1956年 イギリス王立文学会特別会員。
     *1964〜65年 カリフォルニアのスタンフォード大学行動科学研究所特別会員。
     *1977年 本書出版。
     *1983年 妻と謎の死を遂げる
 さらに不思議なことは、彼の死を報じた新聞はその業績とともに彼の多くの著書を紹介したが、本書は著書名の中には挙げられていなかった。
 本書によって世界の焦点、ユダヤ=イスラエルの真相が見えてくる。

3.今日イスラエルに対するパレスチナ人達のインティファーダ(蜂起)が世界の新聞を賑わわしている。
 1948年5月、イスラエルが建国されるまで、すなわちユダヤ人達がそこは自分達の土地だと主張するまで、パレスチナ・アラブ人はその地で平和に暮らしていた。しかし戦争が始まり、多くの人々がパレスチナの地を追われ、ある者はイスラエルの占領地に住まざるを得なくなった。
 1967年の6日戦争においては、さらに多くのパレスチナ人達が先祖の地を追われてヨルダン、シリア、レバノンへと移っていった。
 4回にわたる中東戦争の結果、またあらゆる中東和平案においても、彼らの苦悩と離散を解決することはなかった。
 パレスチナ人達はまさに絶望の状態にある。しかし本書はそのイスラエル建国がいかに不幸なものであり、ユダヤ人のやり方がいかに傲慢きわまりないものかを示すものである。

4.ユダヤ人は、建国の根拠としてバルフォア宣言を持ち出すこともあるが、多くの場合は自分達の先祖がこの地に住んでいたから自分達もここに住む権利があると主張する。
 スファラディ・ユダヤ人がそう言うならわからないでもない。しかしアシュケナージ・ユダヤ人、すなわちもとは中央アジアにいたカザール人がなぜそのように主張するのか。彼らは主張するだけでなく武力を行使してパレスチナ人を追い払った。彼らの先祖は今のイスラエルの地に住んでいたわけではまったくないのに。

5.世界最大の難問は何と言っても小さな地、しかし三大大陸の要でもあるこのパレスチナ問題を抜きにして解決することはない。
 複雑極まりないパレスチナ問題に明確な解答を与える本がこの本なのである。(2005.05.30)


(参考) ■ 「ユダヤ人問題」についての文献リスト

 

文献名

出版社

発行日

著者

01

「ユダヤが解ると世界が見えてくる」

徳間書店

1986.04.30

宇野正美

02

「アメリカでいま権力闘争が起きている」

学習研究社

1991.06.25

宇野正美

03

「見えざる帝国」

文芸春秋社

1989.11.28

宇野正美

04

「世界戦略 悪魔の方程式」

学習研究社

1997.02.07

宇野正美

05

「日本崩落」

光文社

1994.01.30

宇野正美

06

「日本溶解」

光文社

1997.09.30

宇野正美

07

「古代ユダヤの刻印」

日本文芸社

1997.05.20

宇野正美

08

「ヒトラーの逆襲」

文芸春秋社

1990.12.23

宇野正美

09

「ユダヤの告白」

エノク出版

1990.12.25

P・ゴールドスタイン、J・スタインバーグ 宇野正美訳

10

「ユダヤとは誰か、第13支族カザール王国の謎」

三交社

1990.05.01

アーサー・ケストラー著

宇野正美訳

11

「“闇”の世界権力構造と人類の針路」

文芸社

1997.04.10

中丸 薫

12

「日本が闇の権力に支配される日は近い」

文芸社

1998.11.10

中丸 薫

13

「闇の世界とユダヤ(明治天皇の孫が語る)

文芸社

1998.02.25

中丸 薫

14

「壊される日本『心』の文明の危機」

プレジデント社

1993.03.31

馬野周二

15

「300人委員会『世界人間牧場計画』の準備はととのった」

kkベストセラーズ

1999.05.05

ジョン・コールマン

16

「迫る破局 生き延びる道 300人委員会」

成田書房

2002.12.15

ジョン・コールマン

17

.「イルミナティ 悪魔の13血流」

kkベストセラーズ

1998.08.05

フリッツ・スプリングマイヤー

18

.「日本・ユダヤ封印の古代史<仏教・景教>」

徳間書店

2000.02.29

久保有政、ケン・ジョセフ著ラビ・M・トケイヤー解説

19

「(日本神道に封印された)古代ユダヤの暗号」

日本文芸社

2000.10.20

月海黄樹、石沢貞夫

20

「ユダヤの世界支配戦略」

マネジメント社

1985.02.06

山蔭基央

21

1998年アーク<失われた聖櫃>が剣山から出てきた」

たま出版

1994.12.15

三浦丈介

22

「秦氏の謎<失われた原始キリスト教徒>」

学習研究社

1998.02.19

飛鳥昭雄、三神たける

23

「失われたイエス・キリスト 天照大神の謎」

学習研究社

1998.08.07

飛鳥昭雄、三神たける

24

「失われたアークは伊勢神宮にあった」

雷龍出版

1999.03.20

飛鳥昭雄

25

「失われたイスラエル10氏族『神武天皇』の謎」

学習研究社

1997.04.30

飛鳥昭雄、三神たける

26

「真実のともし火を消してはならない」

サンマーク出版

2002.05.01

中丸 薫

27

「戦後50年 日本の死角」

光文社

1995.01.30

宇野正美

28

「ユダヤ世界権力が崩壊する日」

日本文芸社

1999.08.20

太田 龍

29

「世界を動かす『影』のシナリオ」

PHP研究所

1984.09.25

倉前盛通

30

「聖書アラビア起源説」

草思社

1998.12.24

カマール・サリービー著 広河隆一、矢島三枝子訳



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