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世界初、NTTと阪大がテレポーテーション型の量子計算を実証
【IT】発信:2008/06/17(火) 12:50:21
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NTTと大阪大学は、量子コンピュータの実現方式として有望な「テレポーテーション型量子計算」の実証に、世界で初めて成功した。これは、量子コンピュータを実現するのに必要な制御NOTゲートを、テレポテーション型量子計算の一つである一方向量子計算で実証したもの。NTT情報流通プラットフォーム研究所・岡本特別研究室の徳永裕己研究員と、井元信之・阪大教授のグループによる共同研究成果である。同成果は、米国科学誌「Physical Review Letters」(電子版、現地5月27日)に掲載された。
現在のコンピュータの性能をはるかに凌ぐ“夢のコンピュータ”と呼ばれる量子コンピュータの実現には、解決すべき困難な課題が多く、特に、量子コンピュータで論理演算を担う量子ゲート素子の実現は難題とされてきた。
量子コンピュータは、回転ゲートと制御NOTゲートと呼ばれる2種類の量子ゲート素子があれば、実現可能と考えられている。ただ量子ビットに対する操作が容易な回転ゲートと違い、量子ビット間に相互作用を起こす制御NOTゲートは、実現が極めて難しい技術である。
NTTと阪大の共同研究チームは、その制御NOTゲートを実現するうえで有望なアプローチとされる、テレポーテーション型量子計算の一種である一方向量子計算に注目した。同方式では、特殊な量子もつれをリソースとして用い、入力側の量子ビットを量子テレポーションして出力側に量子ビットを復元させる。量子ビットがテレポーションされると同時に、演算処理もするという形で量子計算を実行する特徴である。
しかし、テレポテーション型量子計算の実験では、量子もつれで入力側の量子ビットを出力側に贈るだけでなく、送信側で測定した量子ビットの情報を、古典通信でも受信側に送り、出力側での復元に利用している。しかも、これまで他国で行われた実験では、古典通信情報を元に受信側で復元したのか、量子もつれで送信して復元したのか評価がなく、本当に量子テレポーションが実現されているのか分からなかった。
これに対して今回は、独自の評価方法を確立し、テレポーテーション型量子計算において理論的に古典限界を厳密に示して、これを超す出力の忠実度を示し、古典限界値を超える量子演算が実際に成功したことを実証した。
古典通信だけの量子もつれなしのときの出力の忠実度は、理論値で最高でも85.4%(古典限界値)である。これに対し、量子もつれを用いた今回の実験では忠実度が89.5%で、古典限界値を超えた。つまり量子もつれにより、入力側の量子ビットの状態が出力側にテレポテーションされたことを意味する。これにより世界で初めて、テレポーテーション型量子計算の実現を実証したわけである。
今回の一方向量子計算については、光の最小単位である光子を4つ用いて実験した。一方向量子計算のリソースとなる4光子量子もつれの生成は、パラメトリック下方変換を用いた光子生成、そして線形光学素子と光子検出器による極めてシンプルな装置で実現した。それにもかかわらず、生成実験による4光子量子もつれの忠実度は従来の他の実験値を上回り、今回86%を達成した。(科学、6月6日号1面)
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