ネット検索大手の米ヤフーとトップのグーグルがネット広告事業での提携を発表した。ネット検索は成長性が高い分野だが寡占で活力が失われる恐れはないか。利用者が不利益を被ってはならない。
 
 ヤフーとグーグルを合わせると米国のネット検索でのシェアは約80%にも達する。三位マイクロソフトの9%をはるかに引き離し、圧倒的な存在となる。
 
 ソフトウエアの巨人マイクロソフトは発表を受けて、ヤフー買収を断念することになった。
 
 米上院反トラスト(独占禁止)小委員会のコール委員長は提携について、「広告主と消費者への影響は大きい。慎重な審査が必要だ」と述べている。
 
 提携は当面、北米に限られ、日本のヤフーへの直接的な影響はない。だが、将来、米ヤフーがグーグルに吸収されるようなことがあれば、日本のヤフーにも影響が及ぶ可能性がある。
 
 ヤフーが独禁法違反の危険を冒してまでも競争相手のグーグルと提携を決断したのはどうしてか。いったん一位と二位の差がつくと、追いつくのが難しいネット業界特有の競争の厳しさを痛感したためなのかもしれない。
 
 ヤフーは提携により年間八億ドル(約八百六十億円)の増収になるという。だが、その見返りに自らの検索ページにグーグルから送られてくる広告を入れなければならない。本丸の一部を明け渡すに等しい。
 
 競争をあきらめたヤフーを見限るかのように、これまで成長を支えてきた技術者が見切りをつけて、転職する動きが始まっているとも伝えられる。当分の延命は図れたにしても、やがてヤフーが完全にグーグルの軍門に下ることもありえよう。
 
 いまやネットで情報を探すには検索サイトに頼るのが当たり前のようになった。検索はネット利用に欠かせない存在だ。
 
 寡占下で、仮にグーグルやヤフーが特定のスポンサー企業を優遇して常に検索結果の上位に表示する恣意(しい)的な操作をしても利用者には、なかなか分からない。
 
 活発な競争があれば、利用者も検索サイトを比較できるが、寡占はそれを難しくする。技術競争も停滞し、やがて企業自身も衰退の道を歩むことになりはしないか。
 
 ヤフーは検索サイトの草分けでもある。提携は一時的なものとして、挑戦の姿勢をもう一度見せてほしい。
 
 
この記事を印刷する