社説

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

社説:骨太の方針 消費税率はどうするのか

 「経済財政運営の基本方針2008」(骨太の方針08)が月末に閣議決定される。小泉純一郎政権時代の01年に策定され始めて今年で8回目になる。素案では「成長力の強化」「低炭素社会の構築」「国民本位の行財政改革」「安心できる社会保障制度、質の高い国民生活の構築」のテーマが並んでいる。そして、最後の章で09年度予算編成への基本的考え方が示されている。

 小泉政権時代には、改革のマニフェストであった。それは時代がそうしたともいえる。しかし、森喜朗内閣で毎年夏に、骨太の方針の策定を決めたのは、財政再建が急務となっている中で、概算要求基準決定前に大所高所からの提言を得るためだった。

 この命題はいま、より重要性を増している。09年度は歳入、歳出両面で大きな問題を抱えているからだ。具体的には、景気減速で税収の伸びがあまりあてにできない。一方で、基礎年金の国庫負担引き上げを実施しなければならない。道路特定財源の一般財源化後の姿も確定しなければならない。11年度の国・地方を合わせた基礎的財政収支黒字化を確実にする措置も講じておかなければならない。

 福田康夫首相の消費税率引き上げ決断発言もそうした状況をふまえてのものと理解できる。それだけに、骨太の方針は歳出、歳入いずれにおいても、09年度予算の骨組みを提示する内容でなければならない。

 かなりの国民は、いずれ消費税率は引き上げざるをえないことは頭では理解している。ただ、それが財政のつじつま合わせでは納得が得られないだろう。

 そこで、基礎年金の国庫負担分の引き上げのための財源措置がなぜ必要なのかいわなければならない。これは予算編成で最大の論点だ。「安定的な財源」というだけでは逃げである。消費税問題は基礎的財政収支黒字化や、10年代半ばに債務残高の国内総生産比を安定的に引き下げることにもかかわってくるからだ。

 加えて、介護や医療、少子高齢化対策として「別枠」で増額を認める提案では、その財源手当てを明確にしなければならない。

 ここ数年、骨太の方針は年末の政府案に盛り込む重要政策課題のリスト的な色彩を強めている。今年もそのようにみえるが、方向を間違ってはいけない。

 経済成長戦略や低炭素社会づくりは重要な政策課題であることは事実だ。ただ、予算の大枠を論ずる時にあえて取り上げることとは思われない。

 いま、財政運営において、何よりも重要なことは、次の総選挙に便乗した歳出要求をはねつけつつ、社会保障や地域再生など財政固有の課題に取り組むこと、その財源対策を講ずることだ。経済財政諮問会議が策定する骨太の方針はその役目を担っている。この原点を忘れてはならない。

毎日新聞 2008年6月23日 東京朝刊

社説 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報