西日本新聞

安心して出産、サポート 西南女学院大が「助産別科」開設 養成機関 6年ぶり“誕生” 医療施設の協力不可欠

2008年6月23日 05:22 カテゴリー:九州・山口 > 福岡

 西南女学院大(小倉北区井堀1丁目)は本年度、助産師の育成を目指す1年課程の「助産別科」を開設した。女性が健康に、安心して出産できるようサポートする仕事だが、全国的に数は不足しているのが現状だ。北九州市では6年ぶりに“誕生”した助産師養成機関の取り組みを追った。 (北九州支社・古長寛人)

■細心の注意払い

 「失礼します」。ベッドの上に“妊婦”が横たわる。おなかの中に胎児もいる精巧な人形だ。学生たちの表情は真剣そのもの。人形とはいえ、妊婦に不快感を与えないよう細心の注意を払う。丁寧に声を掛け、膨らんだおなかを触る。

 助産師は妊婦の触診が認められ、正常分娩(ぶん べん)ならば1人で介助することもあり得る。助産別科の実習室は産婦人科医院と同じ機能を備え、妊婦の自宅での触診などを想定して畳6畳のスペースも用意してある。講師の上野恵子さんは「つめをきちんと切っているか、(触診する)手は冷たくないかなど、助産師のエチケットやマナーから指導する」と説明する。

 助産別科で学ぶのは看護師資格を有する(取得見込み者を含む)20人の女性。受験者62人の中から約3倍の難関を突破した将来のエキスパートたちだ。助産学や生命倫理などを1年間学べば、助産師国家試験の受験資格が得られる。看護師の女性(30)は「同じ女性として妊婦の悩みを理解し、お産をしっかりサポートできる助産師になりたい」と話す。

■常勤0の施設も

 北九州市では2002年3月、国立小倉病院(当時)の助産師養成機関が30年近く続いた歴史に幕を閉じた。地域で助産師を育てる施設がなくなり、西南女学院大は同市や地元産婦人科医会の要望に応える形で助産別科の新設に踏み切った。

 別科長には、助産師になって半世紀以上のキャリアを誇る浅生慶子教授が就任。同教授によると、2006年度の北九州ブロックの産婦人科医会調査で、19人以下の患者が入院できる有床診療所(27施設)では、常勤の助産師ゼロが7施設、1人が7施設と全体の半数以上を占めた。「(助産師は)不足している」と答えたのは21施設に上った。

 厚生労働省などの調査では、全国の就業助産師は約2万6000人で6700人ほどが足りないと指摘されている。浅生教授は「福岡県内の助産師は1000人ほど。人口10万人に対する助産師の数はわずか20人しかいない」と助産師不足を嘆く。

■尻込みする現場

 助産師を養成する上で課題もある。

 同大の助産別科では、学生たちに医療機関での実習や最低10例程度の正常分娩介助を卒業要件として義務付けている。しかし、万一の事故発生の恐れや指導体制の不安から「受け入れを尻込みする医療施設は少なくない」(助産別科)という。

 浅生教授は「通常6割ほどが正常な出産で、助産師だけでも対応できる。産科医はハイリスクな出産に集中できるようになり、助産師が増えれば、産科医の負担は確実に減る」と説く。

 北九州・京築地区で6年ぶりに誕生した同大助産別科を育て、より多くの助産師を送り出すためにも、地域の医療機関の協力は不可欠だ。

=2008/06/23付 西日本新聞朝刊=

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