最大震度6強を記録した岩手・宮城内陸地震の発生から一週間が過ぎた。被災地は本格的な梅雨の時期となり、土砂が川をせき止めた土砂ダムの決壊など二次災害の危険性が指摘される。避難生活を余儀なくされている人もいる。被災者への支援の充実が必要だ。
震源は岩手県内陸南部だった。家屋の倒壊などは少なかったが、山間部では山肌がえぐられ、橋が崩壊し、道路が寸断された。今回の地震の特徴は、外部と行き来できなくなる孤立集落が続出したことだ。最大で七百人以上が一時山あいに取り残された。一部の地域では電話が通じなかった。孤立した人は「道も閉じているので外の様子が全く分からなかった」と恐怖を語っていた。
山間部での孤立集落問題は、二〇〇四年の新潟県中越地震で浮かび上がった。長岡市など当時の七市町村で六十一集落が孤立し、山間部の集落の防災力強化が課題として認識されるようになった。
日本の国土は、面積で約七割、人口で約一割を中山間地域が占めている。中越地震を受けて内閣府が行った都道府県アンケートでは、大地震が発生すると約一万七千集落が孤立する可能性があるとの結果が出た。高齢化が進んでいる地域である。
深刻な問題は、防災対策の遅れが明らかになったことだ。公民館や集会所などの避難施設無しの集落が20%を超えた。避難施設があっても、耐震性が不十分な施設の集落が64%に上った。非常電源を確保している集落はわずか2%、飲料水の備蓄がある集落は4%、食料の備蓄は6%にとどまる。
重要になるのは、避難所となる学校や集会所の耐震化であり、無線などの通信手段設備の確保や食料、水、医薬品、毛布などの生活物資の備蓄であろう。それぞれの集落にとっては、孤立化に備えた避難訓練の定期的な実施も大切だ。先のアンケートでは、避難計画の無かった集落が九割近くに達していた。危機感を高める必要があろう。
今回の地震で孤立集落支援に大きな力となったのがヘリコプターだった。消防防災ヘリだけで、宮城、岩手両県を含む十七都道県から合わせて二十機が出動した。だが、孤立する恐れのある集落のうち、八割以上はヘリ駐機スペースがないとされる。いざという時のために、田畑や農林道などを含めてヘリが降りられる場所の確保を真剣に検討しなければなるまい。国などの防災対策に関する積極的なかかわりも欠かせない。
福田康夫首相にとって初の通常国会が閉幕した。衆参両院で与野党の勢力が異なる「ねじれ現象」の下での攻防は、八月下旬に召集予定の次期臨時国会に舞台を移す。
今国会は空転状態のまま幕を閉じた。参院での福田首相に対する問責決議可決を受け、民主党などが審議拒否に入ったからだ。国民から批判の強い後期高齢者医療制度をどうするかなど最終盤での国会対応が注目されたが、肩透かしを食った感は否めない。
ただ全般を通じていえるのは、先の臨時国会に続く今国会は、ねじれの功罪がより明確になったことだ。プラス面ではまず、国会が法案の実質的な審議の場として機能アップしたことが挙げられよう。
以前は与党の事前審査を通った法案は、ほぼ自動的に成立するなど国会審議は形式化した面があった。だが、三十年以上も続いた揮発油税の暫定税率が問題化するなど、国会のチェック能力が強く働きだしたのは間違いない。国家公務員制度改革基本法では、与野党が「廃案よりは」と修正合意した。国会が民意を意識した合意形成の舞台になったことを印象づけた。
さらに中央省庁の情報開示も進んだ。道路特定財源では、マッサージチェア購入などの無駄遣いが明らかになった。野党の力が強まり、省庁側が追及をごまかし切れなくなったからだ。
一方で与野党が対決姿勢を強調するあまり、議論が深まらなかったケースが目立った。後期高齢者医療制度がそのいい例だろう。衆院に優越性がない日銀幹部など国会同意人事の在り方も課題として残された。
ねじれの功罪を与野党とも検証し、次期国会に生かす必要がある。それができなければ国民の失望を招くだけだろう。
(2008年6月22日掲載)