◎航空機産業参入 行政側も支援策の研究を
航空機産業への新規参入を支援するため石川県鉄工機電協会は先ごろ、会員企業向けの
セミナーを二回にわたり開催した。航空機市場は高い成長が見込まれており、関連技術を持つ全国の中小企業が参入を競っている。企業間、地域間の競争が激しさを増す中、勉強会から次の一歩をどう進めるか。行政の立場から県なども次の段階の支援策を研究してもらいたい。
県内では、東レが能美市の新工場で生産する炭素繊維素材をボーイング社の旅客機に供
給する予定であるが、地域製造業の高い技術力からして、他の部品でも参入機会を積極的に探る価値はある。国内の機体メーカーなどの生産拠点は東海地区に集積しており、東海北陸自動車の全線開通がプラスに作用することも期待できる。
日本航空機開発協会などによると、世界の航空機は今後二十年間で現在の二倍の三万機
以上に増えるとみられ、その市場規模は三百兆円ともいわれる。日本のメーカーは機体や部品の供給源となってきたが、三菱重工業による国産ジェット旅客機の事業化が市場拡大に一層弾みをつけている。
旅客機は百万単位の膨大な数の部品で作られることから、関連産業のすそ野がたいへん
広く、部品交換や修理などのアフターマーケットの規模も大きい。こうしたことから、航空機関連企業の誘致や参入支援に力を入れる自治体も目立つ。
参入支援の例では、東京都は参入をめざす中小企業と航空機関連メーカーとのマッチン
グを後押ししたり、航空機産業への参入に必要な国際品質規格(JISQ9100)の取得経費を助成するなどしている。また、岐阜県は「航空機部材研究会」を今夏にも設置し、航空機部品の材料や加工技術などの研究開発を推進するという。
一方、参入を図る企業側では、共同で部品生産を行ったり、グループで研究や受注開拓
を進めるなど企業連携が一つの特徴になっている。県鉄工機電協会は研究会の設立も視野に入れているというが、今後の取り組みでは、いわば地域企業のチーム力と本気度も試されるといえる。
◎分権改革要綱決定 伝わらぬ内閣のやる気
全閣僚で構成する政府の地方分権改革推進本部が、今後の取り組みの基本方針を示す分
権改革推進要綱を決定した。要綱は閣議決定と同等の重みを持っており、本部長の福田康夫首相は「分権改革は内閣の最重要課題であり、各閣僚は先頭に立て」と号令を発したが、その言葉ほどに内閣のやる気が伝わってこないのは残念である。
政府の地方分権改革推進委員会の第一次勧告を受けて決定された推進要綱は、冒頭で「
勧告を最大限に尊重する」と明記している。これは当然のことであり、最後までゆるがせにしてはならない大原則である。ところが要綱の中身をみると、勧告から後退したり、抜け落ちた点が少なくない。
たとえば、勧告が求めた農地転用許可権限の移譲や保育所施設の一律基準見直しは「検
討」にとどまった。また、直轄国道や一つの都道府県で完結する一級河川の管理は、勧告通り「原則として都道府県に移管する」としたものの、具体的な移譲対象は国土交通省の検討にゆだねられた。
福田首相は「政治主導」の分権改革を強調し、関係閣僚に対して「事務方のやり取りに
任せず、政治家として判断を」と指示してきた。しかし、分権改革の折衝で閣僚から前向きの回答はほとんど聞かれず、一部で官僚の代弁者の印象も否めなかった。推進委は今秋に第二次勧告を行うが、閣僚が分権改革の推進力になり得ていない状況では、勧告がどこまで尊重されるか心もとない。
政治主導の分権改革というからには、福田首相がまず先頭に立って指導力を発揮する必
要があることは無論、閣僚もそれぞれ政治家としての見識や決断力を問われていると認識してほしい。
自治体側も政治主導を積極的に後押しし、監視してもらいたい。これまでの推進委など
の議論では「都道府県の影が薄かった」という声も聞かれた。第二次勧告に向けて、地方の主張をもっと強める必要がある。また、今回の分権改革のもう一人の主役である市町村も、これまで以上に声を上げなければなるまい。