ごちゃまぜな「ルポルタージュ」

 Leiちゃんが、「荒廃のカルテ:少年識別番号「1589番」として呼ぶ方が馴染み深い」と題して、読後感を語ってくれたの。Leiちゃん、ありがとう。
 
 あたしは、この事件が起きたことも知らなかったし、本が出たことも知らなかったの。あたしの記憶は曖昧なうえに、テレビもラジオも視聴しないから、世間を騒がせた事件でも、知らないことがある。
 
 ただ、この本は、なぜか買っていたの。でも、読むことが出来ず、本棚の奥に眠っていた。さらに、文庫まで持っていた。
 あたしのくせは、そのときに読めなくても、向き合えなくても、とりあえず買ってしまうこと。いつか、読もうと思って買うけど、そのまま本棚に入れっぱなしになるから、新品のまま。ハードカバーの奥付けをみたら、1985年の7月1刷、91年8月4刷とある。だから、91年以降に買ったものだと思うの。
 
 今回、もこさんとのやりとりの中で、思わずこの本の話をしたけど、読んだ記憶がないの。せっかく話がでたし、Leiちゃんが読むというので、これまた新品で一度も読んでいな文庫本をあげた。
 
 Leiちゃんが、こんなに丁寧に読後感を語ってくれたから、あたしも、頑張って読むことにしたの。でも、頭が痛くなるわ、吐きまくるわ、気がついたら眠っていたわ、でさんざんだったわ。
 
 実は、この話は、過去にEdwardさんから聞いていた。本に出てくる憩いの家の保母とも親しいEdwardさんは、いろいろ話してくれた。でも、Edwardさんも、裁判には行っていないので、あらすじしか知らない。
 
 さて、あたしの読書方法は、付箋片手に、気になったところに片っ端から付箋を貼り、一気に読み飛ばすこと。付箋を貼った場所以外は、そのときのあたしの感性に響かなかったところだから、深く読んでも仕方ないと思うの。
 あと、仕事の書類を読むつもりで、感情を切り離して事務的に読むの。でなかったら、吐きまくって読めやしないの。


 この本の感想を一言で言うと、
 
 施設育ちの起こした事件を、家庭育ちの立場から懸命に理解しようとしているということ。
 
 原稿を水増しするかのように、本筋と関係のない家庭の問題が語られ、事件の本筋が曖昧になっていくの。
 それに輪をかけるのが、
 
 「このケースは特異なものではありません。私のところにやってくる親の過剰期待や幼児期の母子関係のつまづきで人間関係のコミュニケーションができない子どもの症状とそっくりです」という児童精神科医の言葉を冒頭で紹介しているように、
 家庭育ちの視点・症例から、養護施設だけで育った人が起こした事件を読み解こうとしているとしか思えない
 
 小児療育相談センターの所長は、「登校拒否や家庭内暴力、暴走族、拒食症、自殺未遂などの子どもたちに共通した減少」といい、「人との信頼関係が出来ず、どう人間関係を持っていいか学習できないまま成長してしまった典型例」だという。
 この分野で有数の臨床医というわりには、このような子たちが「結局集団の中に入っていけない」と言いながら、入れる入れないにかかわらず、集団でしか生活させてもらえない子どもがいることが念頭にないコメントになるの。
 
 乳児院の施設長の発達心理学的意見もあるけど、結局人手で足りずに手をかけられなかったいいわけに終始する。それどころか、枕ミルクやヒステリックな保母の話は、乳児院でも手をかけてもらえなんった実態を浮かび上がらせるの。
 
 そして、3歳になって行った養護施設は、非行少年収容施設として設立した感化院が前身の、3歳から18歳までの男子のみの定員70名のスパルタ養護施設。
 ※わざわざスパルタと言わなくても、全ての施設はスパルタだと思うのだけど…

 修さんは弁護士にこう語っている。
 「顔以外は全部殴られた」と。
 
 ほかにも、
 殴り続けると腹筋が発達し、効果がないから、「アーイーウーエー」と声を出させ、息を吸おうとした瞬間にみぞおちを殴る。
 「落下傘」というリンチ。押入の上の段から仰向けに寝ている腹の上に飛び降りる。
 幼児が保母に甘えると、中学生が幼児をぼこぼこに殴る。
 修さんが小学2年生になった6月に、入所して一ヶ月も経たない三歳児が中三の部屋長に殴る蹴るのリンチを受けて死亡したの。
 椅子に座る格好で壁に背中を付け、両手を前方に突き出す「中腰正座」というリンチ。腕に分厚い辞書やカバンを載せるだけでなく、お尻の下に画鋲をおく。
 ※あたしの施設では、これを「空気椅子」と読んでいたわ。
 正座する足の間にバットを挟む。
 バットで頭を殴ると死ぬから、手を殴る。骨折した子もいる。
 鉄アレイを腹に落とす。
 熱い風呂に入れて我慢できないものを殴る。
 下級生同士に倒れるまでボクシングと称して殴り合わせる。
 2階の窓から放り出される。

 
 肉体的な暴力だけではないの、
「小学校低学年時代に上級生である中学生の性器を”口に含ませられる”という異常な性体験を何人かの卒園生が持っている」
 卒園生の一人はいう。
 「真夜中に起こされて布団とか押入の中で”なめろ”って言うんです。卒園生にやられたこともあります。」
 ある卒園生は、「そういうことはありました。でも、詳しいことは話したくありません」と顔を苦しげにゆがめ、幼少時の忌まわしい体験が成人したいまも心の傷となっていることをありありと示した。

 と、上級生から下級生への性暴力が日常的にあったというの。

 ま、施設では、こんな暴力は日常的だったから、驚かない自分に悲しまなくてはいけないと思うのだけど… 

 この修さんは、服役中の母親から生まれたの。出所した母親が乳児院に何度も会いに行ったら、
若い保母が「懐かれるのは困る。面倒を見るのは私たちなんだから」という。
 養護施設でも何回か面会に行ったら、「引き取らないならあまり来ないで欲しい」と言われる。
 
 弁護士が中心となって、「八〇三号法廷問題を考える会」が出来たという。
 この弁護士さんは、恩寵園の裁判にも関わっているみたい。
 
 この横川和夫というライターは、足立区の女子高生監禁殺人事件のルポルタージュ「かげろうの家」など、さまざまな少年事件のルポを書いている方。だけど、養護施設だけで育つことの問題には、深く掘り下げることが出来ていないのは、とても残念だと思ったわ。
 
 ところで、このルポに出てくる「桜木学園」ってどこ? とEdwardさんに聞いたら、「錦華学園」だと教えてくれた。
 
年譜
昭和39年4月7日 刑務所隣の産婦人科医院で出生
         4ヶ月後、乳児院に入所(事件現場から南西4キロ)
昭和42年     3歳で養護施設入所
昭和55年3月24日 中卒で養護施設退所
         近くの自動車整備工場に住み込み勤務
    6月2日 自転車盗で補導
    11月4日    々
    11月8日 パン屋に住み込みで就職
昭和57年4月   住居侵入未遂事件
         少年鑑別所にいく。
    5月11日 更生保護施設に入所
         保護観察処分(保護司の監督の下に生活する)
         鉄工所に勤める
    9月7日 6回目の住居侵入未遂事件、現行犯逮捕決
         短期少年院送致
昭和58年3月8日 短期少年院仮退院
    4月27日 「女子大生暴行殺人事件」犯行
昭和59年3月15日 地裁で無期懲役判
昭和59年9月11日 「女子大生暴行殺人事件」控訴審第一回公判
         東京高裁803号法廷
    11月8日 第3回公判
    11月27日 第4回公判 最終弁論
    12月10日 「八〇三号法廷問題を考える会」第一回会合
    12月18日 控訴審判決 控訴棄却
昭和60年7月10日 荒廃のカルテ−少年鑑別番号1589− 出版
 

 暇があったら、図書館で当時の新聞記事を捜してみようと思うの。

 修さんは、いま、43歳。19歳から、もう24年も刑務所にいる。社会にいたのは、15歳で施設を出て、犯行を犯すまでの4年間だけ…

 養護施設という収容所からようやく出ることが出来たのに、別のところに収容された。

 修さんは、里親家庭で育っていれば、犯罪も犯さずに、もっと違った人生を送れたと思う。何回か面会に来ている母親とも、関係を作れたと思うの。

 いったい、誰が責任をとるわけ?
 一番、責任をとるべきなのは、錦華学園の施設長・職員じゃないかしら…

 事件後、修さんの拘置所に、錦華学園の職員が面会に行っているという。いまさら…、という気がしないでもない。判決後、刑務所に収監されたあとについては記述がない。

 いまは、どうなっているのかしら…

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気になる

>いまは、どうなっているのかしら…

 ほんとうに、怒りが沸々と沸いて仕方ない・・・。とはいえ、被害者である女子大生の死の事も忘れてはならない。

 一通り吐いたら、目から水が出てきた。

お疲れ様、そしてありがとう

Mariaさん、ありがとう。

私にも買っておいて、読まない本と言うか、すぐには読めない本がたくさんあります。
誰かが日本語に訳した本はどんなタイトルでもすぐ読めるのですが、日本の文化の中で、書いてあるものは、大変勇気がいります。体調にも気をつけないと、クラクラすることが多いです。

人の多くは、「そんな思いをしてまで語らなくても・・」と言うでしょうが、でも・・・という気持ち、行動になること、それは当事者が語らないと、だれもわからないことなのだと思っています。

ありがとう。
年末ですから、仕事も忙しいのではないかと、思いますが、心も、体も大切にしてください。
その想いを受け止めて、私が出会える人たちに伝えて生きます。
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