Print this Post Article Lists Back

【コラム】オバマ氏への苦言(下)

 こんな発言を聞いていると、大統領選で韓米FTAや自動車の問題を重要な争点にしようという意図があるのではないかと思えてきます。あなたのそうした戦略は恐らく、不況にあえいでいる米国の自動車業界で働く人たちの支持を集めることにつながるでしょう。

 しかし、事実と大きく異なる主張をすることで、米国の労働者たちの票を集めようというのは、超大国の大統領候補らしい行動だとは思えません。

 韓米FTAで、米国車の輸入だけが貿易障壁になるということはありません。現在、米国の自動車産業が直面している問題は、退職者の年金まで責任を取ろうという「レガシーコスト(負の遺産)」に起因するものだということをご存知でないように思います。自動車1台につき500ドル(約5万4000円)にも及ぶレガシーコストによって、米国の自動車業界は競争力を失ってきたのです。米国の3大自動車メーカーであるゼネラルモーターズ、フォード、クライスラーの車の売れ行きが悪くなり、販売代理店の倒産が相次いでいるのではないでしょうか。

 わたしが知っている米国の公務員や議員秘書たちが乗っている車の大部分は、日本車をはじめとする外国製の車です。わたしの家があるバージニア州マクレーンの、典型的な米国人の中産階級が住んでいる住宅団地に停められている米国車のほとんどは、新車ではなく、過去の栄華を思い起こさせるような古い車です。米国人が真っ先にそっぽを向いた自動車を、他国が買ってくれない、と批判するあなたの考えには共感できません。

 あなたに対し、割と好意的な論調を見せてきたニューヨーク・タイムズ紙ですら、今月15日付で「韓国への自動車の輸出は、オバマ候補が考えているよりもはるかに難しいものだ」と批判したということを申し上げます。同紙があなたの姿勢について、「大衆迎合主義(ポピュリズム)」だと批判したことも、頭に入れてほしいものです。何度も経験してきたことですが、ポピュリズムというのは一時のブームであって、永遠に続くものではなく、人々からそっぽを向かれることもあり得るものです。

ワシントン=李河遠(イ・ハウォン)特派員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
このページのトップに戻る