2007年の5月3日に日本国憲法は満60年を迎えました。この日の朝刊に、8ページを使って21本の社説をいちどに掲載しました。
「地球貢献国家をめざして」を総タイトルに、日本の針路を問うた「社説21 提言・日本の新戦略」です。
21世紀の世界のなかで、日本はどんな道を歩んでいったらいいか。10年後、20年後をにらみながら、私たちの考え方を集大成して節目の日にお届けしました。
目先の国益をこえ、多くの国が利益を分かち合うため、これからは世界の「世話役」になっていこう。それには、省エネと技術開発を進めて地球環境を守る。とくにアジアの国々と理解し合い手を結んで、安定した経済圏をつくる。
そして、憲法9条は変えず、準憲法的な「平和安全保障基本法」をつくって自衛隊を位置づける。そのうえで、紛争地での平和構築活動へも積極的に参加し、よりよい世界づくりに加わっていく……。
そうした内容でした。おもに世界とのかかわりについて提言したものでしたが、秋からは国内政策のシリーズを掲載していく予定です。
人によって顔かたちが異なるように、新聞の「顔」でもある各社の社説の主張も最近、ずいぶん異なるようになりました。たとえば、首相の靖国参拝の是非、イラク戦争や自衛隊派遣の評価、卒業式での国旗掲揚と国歌斉唱の強制などをめぐる、朝日新聞と産経新聞との主張は大きく異なります。
なぜ私たちがこう考えるのかをはっきりと、わかりやすく書くとともに、その違いを示して読者の判断の材料にしてもらう。論説委員室は、そんな気持ちで日々の社説づくりに取り組んでいます。
説得力のある主張を展開するためには、独りよがりではないこと、裏付けとなるデータがきちんとしたものであることが必要です。そのために取材を重ね、知恵を出し合うことは、私たちのやりがいでもあります。
論説委員は、それぞれ政治、経済、社会、国際、文化、科学、スポーツなどの分野で経験を積んだベテラン記者たちです。論説主幹を中心に毎日会議を開き、「今日は何の問題を取り上げるか」「どんな主張をするか」「だれが書くか」を決めています。
価値観が多様になり、世代や地域の利害も複雑に入り組んだ時代です。会議ではいろいろな考えがぶつかり合います。ときに激しい言い合いになるほどの率直で徹底した議論の中から、朝日新聞にふさわしい主張を練り上げていくのです。
〈天声人語〉 1904年から続いている朝日新聞の看板コラムです。読者から毎日たくさんの手紙やメールが届きますが、それは注目度の表れでしょう。休刊日以外は、年始めから大みそかまで休みなし、扱うテーマは森羅万象とあって、担当記者は肉体的にも精神的にも強靭(きょうじん)さが求められます。筆者は2007年4月から2人制になり、福島申二と冨永格が担当しています。
〈素粒子〉 夕刊一面の、これも売り物コラムです。日々のニュースを「寸鉄人を刺す」の意気込みで切ってみせます。14行と短いだけに、加藤明は早朝から新鮮な素材を探し出そうと新聞の隅々に目を通し、執筆に頭を悩ませています。
〈窓〉 ちょっと取っつきにくい印象もある論説委員室が夕刊に開いた窓といったコラムです。筆者の名前を出したり、難しい漢字にはルビを振ったりして、読みやすさ、親しみやすさにも心がけています。