【北京・浦松丈二】北京五輪の聖火リレーは21日、中国チベット自治区ラサで大きな混乱もなく終わり、中国指導部は胸をなで下ろしている。ラサで3月14日に発生した大規模な暴動から3カ月余り。中国からの分離・独立運動を封じ込め、民族団結と治安回復を内外にアピールした形で、8月開幕の五輪に向けた難関の一つを越えたことになる。
リレーは民族団結を意識した演出が目立った。156人の走者は漢族とチベット族がほぼ同数ずつ選ばれた。スタート前には四川大地震の犠牲者に黙とう。ゴール地点のポタラ宮前広場で、自治区トップの張慶黎・党委書記が「雪山(チベット)と北京がつながってこそ、中華民族はさらに団結し、調和が取れる」と訴えると、動員された数千人の漢族、チベット族から大きな拍手がわき起こった。
中国治安当局はラサでの聖火リレーにあたり、僧侶らの暴動再燃を警戒。同自治区内のリレーは直前になって当初予定の3日間から1日だけに短縮されたほか、外国メディアの取材人数も制限された。自治区政府のペマ・トリンレ副主席は20日夜の記者会見で「チベット独立派が聖火リレー破壊をもくろんでいる」と危機感をあらわにしていた。
チベットと同様に分離・独立勢力を抱える新疆(しんきょう)ウイグル自治区の聖火リレー(17~19日)でも、治安当局は一般市民を排除して厳戒態勢を敷き、大きな混乱はなかった。次のヤマ場は大地震に襲われた四川省を通過する8月上旬。中国指導部は民族団結を前面に打ち出して震災復興を急ぐことになりそうだ。
毎日新聞 2008年6月22日 東京朝刊