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【主張】年金機構 正規採用の抜け道化防げ
厚生労働省が、社会保険庁の年金部門を引き継ぐ「日本年金機構」の人員計画の最終原案を、政府の「年金業務・組織再生会議」に提示した。
年金記録のぞき見などで懲戒処分を受けたことがある社保庁職員は原則、正規職員として採用しない。職員のデタラメな仕事ぶりが国民の信頼を損ない、社保庁解体を招いたことを考えれば、当然の措置だといえよう。
ただ、処分歴があっても、専門知識を持つ成績優秀者は例外的に正規職員にするという。厚労省は「第三者機関が個別に面接し、厳正に審査する」と説明するが、その採用基準は「新組織の構成及び運営上不可欠な人材」とされただけで、具体的言及はない。
往々にして、例外規定は都合良く解釈されるものだ。間違っても乱用されることがあってはならない。政府は、どういう人を例外にするのか、個別ケースごとに詳細に理由を開示すべきだ。
しかも、問題職員であっても、3年ごとに契約を見直す有期雇用職員としては採用される。有期雇用後の働きぶりによって正規職員に切り替える“救済策”も盛り込まれた。
ところがその転換基準は不明だ。有期雇用職員の労働条件や待遇は正規と同水準となる。さらに、退職金まで正規と同じく社保庁在職期間を通算して機構が一括して支払う形にするという。
これでは、有期雇用とは名ばかりで、「社保庁問題への関心が薄れたころに、どんどん正規職員に切り替えるのでは」と疑われてもやむを得まい。そもそも、有期雇用職員の退職金は社保庁廃止時に社保庁が支払うべきだろう。再生会議は、問題職員がなし崩し的に正規採用される抜け道とならぬよう、早急に対応を図るべきだ。
民間採用枠は当初案の約400人より増やしたが、約1000人にとどめた。機構職員数全体の1割にも満たない。組織に新風を吹き込むにはあまりに少ない。機構が社保庁の腐敗体質からの決別が求められていることを忘れてはならない。社保庁職員の移行を優先させんがために、民間枠を抑えたのであれば極めて問題だ。
機構が国民に信頼されなければ、年金不信は取り返しがつかなくなる。再生会議委員には、最終報告をまとめるにあたって、いま一度、社保庁改革の原点に立ち返ることを求めたい。