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【主張】常用漢字見直し 全く代わり映えがしない

2008.6.22 02:04
このニュースのトピックス主張

 常用漢字の見直し作業を進めている文化審議会国語分科会漢字小委員会はこのほど、現行常用漢字(1945字)から、「銑・錘・勺・匁・脹」の5字を除き、別に新たに188字を加える第2次字種候補案を公表した。

 本表に入れない可能性の高い漢字には「叩・濡・嬉・朋・覗・撫・溜・揃・噛・洩・蘇・雀・釜・磯・撥・謳・蔓」など、国民の文字生活と密着していると考えられる字種が多く含まれている。

 国語や文字について高い見識を持つそれぞれの審議委員が知恵を絞った結果というのに、こうした第2次案となったことは、極めて残念である。

 わが国の国語表記は漢字仮名交じり文である。使用目安の漢字が少なければ少ないだけ漢字語彙(ごい)が減るか、漢字代用の仮名が増えるかのいずれかになることは明らかだ。語彙の乏しさは国語を高度な思考に堪え得ぬものへと劣化させるであろうし、仮名が多ければ読みにくく意味が取りにくくなるだけ国語表記を不便にもしよう。

 なるほど「叩」や「磯」などはほとんど訓に用いる漢字である。しかし、だから仮名で書くのが望ましいだの、仮名で書いてもいいだのとはならない。

 仮名は国語の音節を表すだけの文字だ。同じ表音文字のアルファベットならつづりによって意味が付与されるが、そのことすらできない完全聴覚文字なのである。一方、漢字は字音、字義の情報がその字形の中に盛られている視覚文字で、仮名の中に埋没しない優れた特性を有している。

 特に「覗」のように仮名で書けば「除」と衝突する同訓字の一方を仮名にすれば、国語表記を著しく曖昧(あいまい)にする。このことは、同訓字、同音語だけに収まらない。例えば「くるまで5分」と書いたのでは、「車で5分」なのか「来るまで5分」なのか意味が確定しないのである。仮名の多い文にはそんな例が数多くある。

 昭和56年の常用漢字表以来四半世紀以上も放置された文字規格だっただけに、今回の見直しには期待するところ大だったが、このような代わり映えもしない結果では首をかしげざるを得ない。

 小委員会では次回会合の7月15日に暫定案をまとめるという。これで新指導要領で言語力強化をうたったことに応えられるのか、委員諸賢に再思三考してもらいたいものである。

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