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社説2 資源国カザフと経済連携を(6/22)

 カザフスタンのナザルバエフ大統領が約9年ぶりに来日し、福田康夫首相との会談で投資協定交渉を早期に始めることで合意した。両国の経済協力関係の前進を歓迎したい。

 カザフは、かつて東西の交易路だったシルクロードの国で、国土は日本の約7倍。ソ連の構成共和国だったが、ソ連崩壊によって独立した中央アジア5カ国の1つだ。中国やロシアに隣接し、中央アジアの盟主的存在である。

 カザフには国境を接する中ロはもちろん、米欧や韓国など多くの国々が接近している。地政学的な重要性もさることながら、原油や天然ガス、希少金属など天然資源の宝庫だからだ。特にクロムやチタンの推定埋蔵量は世界1位、原子力燃料のウランは豪州に次いで世界2位を誇る。資源争奪戦が激しさを増しており、日本も傍観してはいられない。

 日本は2006年に当時の小泉純一郎首相が初めてカザフを訪問したのをきっかけに、経済交流が活発化した。東芝、住友商事などが相次ぎウラン鉱山の権益を獲得。日本国内のウラン総需要量の3―4割相当を確保するに至った。

 だが、日本がエネルギーや鉱物資源の調達先を多様化するうえで、カザフとの一層の連携が不可欠だ。特に日本が輸入する希少金属は、中国への依存度が極端に高い。

 ナザルバエフ大統領も「ソ連崩壊後の状況は日本の戦後と同じようなもの」と語り、日本の経済発展モデルに関心を示す。特にハイテクや加工技術に強い日本の直接投資を期待している。両国の経済連携を強める好機である。

 カザフはソ連からの独立後、民主化より開発独裁を優先してきた。欧州安保協力機構(OSCE)の加盟国で、10年には議長国になるが、なお民主主義国家にはほど遠い。法整備も立ち遅れており、民間企業の進出にはリスクが伴う。やはり官の後押しが欠かせない。

 両国は今回、二重課税防止の租税条約締結で基本合意した。次は投資環境の整備に向けた投資協定の妥結を急ぎたい。両国の経済委員会は日本側が民間企業だけで構成されており、官民合同で経済協力を包括協議する場にする必要もあろう。

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