通常国会が21日、閉会した。すでに指摘したように参院での多数を武器に民主党をはじめとする野党が追及を重ねた結果、税金の無駄遣いが次々と明らかになるなど、衆参ねじれの効用もあったと考える。だが、この状況を続けるには限度がある。それを感じさせた国会だった。
通常国会で政府が提出した法案80件のうち成立したのは63件で成立率は78・8%。リクルート事件などに揺れた88年12月召集の通常国会以来という70%台の低い数字となった。
野党との対決が予想される法案は提出自体を極力抑えてもこの数字だ。一方で与党はガソリン税の暫定税率などは衆院で再可決してしのいだが、これがまた「強引だ」との国民の批判を強めることになった。
今、衆院で3分の2以上を占める与党勢力は、05年9月、小泉政権の下で行われた郵政選挙でもたらされたものだ。この「遺産」といえる勢力で国会運営を進めるのは、もはや限界に来ている。今度の国会は、それが明白になったとみるべきではなかろうか。
安倍晋三前首相、福田康夫首相と2人も首相が交代していながら、郵政選挙後は衆院選で国民の審判を仰いでいない。毎日新聞が早期の衆院解散をかねて求めてきた理由は、まずそこにある。
解散は国会を動かす特効薬でもある。次の衆院選で民主党が過半数を取れば、衆参のねじれは基本的に解消する。一方、与党にとってもマイナス面ばかりではない。仮に3分の2の勢力を失ったとしても、過半数を確保すれば直近の民意の支持を得たことになり、野党の参院での対応も反対一辺倒から変化せざるを得なくなると思われるからだ。
福田首相はそろそろ覚悟を決めて、8月召集が予定される臨時国会以降、できるだけ早く解散に踏み切るべきである。
民主党は小沢一郎代表が全国行脚を始めるなど臨戦態勢を整えているようにみえる。だが、大事なことがおろそかになっていないか。衆院選のマニフェスト作りに力が入っているようには見えないことだ。
次の衆院選では年金や医療など社会保障政策が大きな争点となるだろう。その財源をどうするかも有権者の関心事だ。例えば後期高齢者医療制度について、民主党は廃止して元に戻しさえすればいいと考えているわけではあるまい。「民主党政権ならこうする」と具体案を提示しない限り、「政権担当能力があるのか」という声は消えない。
そんな中、福田首相が社会保障政策の財源確保のため、消費税率引き上げに言及した点に注目したい。与党は方針の取りまとめを急ぎ、野党も対案をマニフェストに盛り込む。次の臨時国会は衆院選を絶えず意識しながら各党が政策で競い合う場としたい。
毎日新聞 2008年6月22日 東京朝刊