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2008年6月22日

◎医師と教員養成 定着へ県、大学でスクラムを

 石川、富山県が金大、富大の入学定員で医師確保へ向けた「地域枠」を設けたのを機に 、人材養成で県と大学がスクラムを強化することを望みたい。とりわけ、両大学が担う医師と教員の養成は、地域医療の充実や教育の質と密接にかかわり、県と大学が連携を強めることは人材の定着を図るうえで極めて重要である。

 独立法人化で地域貢献に力を入れる大学側にとっても、優秀な医師や教員を地元に定着 させることは最大の人的貢献と言ってよい。県も遠慮せず、大学側に要望を出してほしい。歩調を合わせるためにも、知事、学長が定期的にトップ会談を持つなど両者が認識を共有することが大事である。

 石川、富山県は来年度から、金大医薬保健学域医学類、富大医学部で修学資金を貸与し て五人の地域枠を新たに設定する。地元で一定期間、医師として勤務すれば修学資金の返済が免除される仕組みである。国の緊急医師確保対策に基づく全国的な措置とはいえ、県としては踏み込んだ大学教育への関与となる。

 政府は四半世紀にわたる医師抑制方針を転換し、医学部定員増へ踏み出した。今後の増 員計画が具体化すれば、「地域枠」の拡大や支援の在り方も検討課題になるかもしれない。地域医療への理解を促すカリキュラムを含め、県も積極的に提案していく必要がある。

 教員についても大量退職時代を迎え、採用倍率の低下によって質の高い人材確保が困難 になることが懸念されている。来年度から導入される教員免許更新制度で県や県教委と大学の関係は強まることが予想され、教員養成段階から採用後の研修システムに至るまで協力できる分野は少なくないはずだ。

 全国的に医師争奪戦が激しさを増しているように、今後は教員も県境を超えて人材確保 の動きが活発化するだろう。実際、公立小学校の教員採用試験で倍率が三倍前後に下がっている首都圏の自治体や大阪府では地方で採用説明会や試験を始めている。

 教員養成課程へ進む学生は地元志向が強いとはいえ、県と大学は楽観せず、全国的な動 きも注視して人材確保策を練ってほしい。

◎骨太方針の素案 抑制方針を堅持せねば

 「歳出改革の努力を緩めず、国・地方を通じて最大限の削減を行う」。福田政権では初 めての「骨太の方針」の素案に明記された文言である。後期高齢者医療制度への風当たりの強さから、これ以上の削減は限界との声も聞かれるが、景気が失速しそうな経済状況下で、増税などできるわけがない。小泉政権下で示された抑制方針を堅持し、徹底した歳出改革に取り組んでほしい。

 福田康夫首相をはじめ、政府・与党サイドから、「消費税引き上げは不可避」といった 発言が相次いでいる。観測気球を上げているつもりなのかもしれないが、政治家の言葉の軽さにため息が出る思いだ。原油価格の高騰やサブプライムローン問題の後遺症で、足下の経済情勢は悪化の一途をたどっている。かつての石油ショックほどの衝撃がなく、国民の自覚症状も乏しいために、「ゆでガエル」のたとえ通り、ぬるま湯がいつの間にか熱湯になり、気が付いたらすっかりゆで上がってたということに、ならぬとも限らない。企業経営者の投資意欲、個人の消費マインドはじわじわと下降線をたどっていることを認識すべきだ。

 税率の引き上げは、確実に景気を冷え込ませる。財源が急に豊かになった政府は、歳出 削減の努力を怠るようになるだろう。今すべきことは、まず無駄な支出を徹底して洗い出すことであり、国民が納得できるだけの歳出削減の実績を積み上げることだ。少なくとも景気が回復局面に向かうまで、無責任な消費税引き上げ発言を封印してもらいたい。

 経済財政諮問会議に提示された素案は、二〇一一年度までの五年間で十一―十四兆円の 歳出削減を目指すとした〇六年の骨太方針の堅持を強調し、道路特定財源の一般財源化を明記した。歳出削減と成長路線を両輪にして、財政再建を図る狙いである。近く示される最終案でも、この路線を変えてはならない。自民党内からは、次期衆院選への危機感から、公共事業や社会保障費の抑制に反対する声が相次いだが、消費税引き上げを前提に、歳出削減路線を骨抜きにする動きには断固反対である。


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