経営悪化が続いている白老町立病院は、小規模老人保健施設を併設した病院に変更し、存続することになった。飴谷長蔵町長が20日、白老町議会に計画内容を示した。記者会見した同町長は、「安心・安全」を公約に掲げてきただけに「医療難民を出さない」という強い信念を示した。先月の老健施設運営基準緩和が大きく後押し、新しい形態での病院経営に来年4月から乗り出す。「白老方式」は今後、公立病院の新経営形態としても注目されそうだ。
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町立病院の病床数は現在92床(一般76床、療養病床16床)。今回方針決定した老健併設の病院は、病床数を60床に削減。29床の小規模老健施設を併設する。救急医療を確保し、診療科は外科、内科、小児科の3科体制で医師は6人。1階は診療部門、2階が入院病棟、3階は老健施設となる。
従来は併設する場合、同一の建物でも玄関は別にするなど機能分担が条件だったが、今年5月1日の法改正で共用できることになった。さらにスタッフの兼用や厨房関係なども共用できる利点があり、大幅な経営の効率化が図れる。現施設をそのまま利用できることから、財政再建中の同町にとって新方式のメリットは大きい。
これにより、人件費やランニングコストの削減が計られ、スタート後の単年度赤字はいずれも1億円以下で、10年後(平成30年度)シミュレーションによる赤字額も9,800万円程度に圧縮できる試算だ。
老健単独でみると、毎年400万円から500万円の黒字を予想、これが病院経営に貢献する。町では向こう7年間現施設を利用、その後、改築や民営化も含めて検討する。
今年3月、道などで組織する自治体病院等広域化・連携構想白老地区検討会議は、主に診療所(19床)と病院(46床)について検討。この中で最も有力視された診療所でも10年後単年度で1億9,000万円の収支不足が生じるものの「診療所による経営が望ましい」として町に報告している。
同病院は昭和41年に建設された鉄筋コンクリート造り3階建て。経営状況は、健全化の効果もなく18年度で不良債務が4億4,500万円。19年度決算予測でも2億円の単年度赤字。毎年一般会計からの持ち出しが続く。
この日、町議会の財政健全化に関する調査特別委員会で飴谷町長が新経営方針を示したが、議会内には病院機能存続に安ど感が生まれた。記者会見した同町長は「長い間熟慮した結果」として新経営方針を示した。
この中で(1)1、2次医療の連携が図れる病床の確保(2)救急医療、小児科医療の確保(3)予防医療を推進する―などを挙げた。さらに「高齢化率の高い白老で高齢者医療、子供の医療が確保されるのは大きい」とした上で、病院の経営努力を促した。課題の医師確保についても現在3人から1人増え、さらにめどがあることも付け加えた。一時は診療所化も有力だったが、タイムリーな法改正で急転直下、新経営方式に一気に傾いた。
公立病院の多くは赤字財政に悩まされている。今回の町立病院の新経営方針でも、大幅に圧縮しても赤字は免れない。町民の“安心料”はどこまで可能かにかかる。 (半澤豊彦)
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