妊娠初期から出産まで14回程度が望ましいとされる「妊婦健診」への市町村の公費負担について、全回を助成対象とする市町村が本年度から全国各地で増えているのに対し、九州では皆無で、大半は厚生労働省が定めた最低基準の5回以下であることが日本産婦人科医会の実態調査で分かった。九州では、市町村によって助成額が8850‐5万3000円と格差が大きいことも判明。国は少子化対策などで助成の拡充を求めているが、九州の手薄な現状が浮き彫りになった。
厚生労働省は昨年1月、妊婦健診の公費負担は「14回程度が望ましい」とした上で、最低基準を「少なくとも5回程度」として都道府県に通達した。従来は国と都道府県の補助金で2回だけ助成する市町村が大半だったが、本年度から助成回数を大幅に増やす自治体が全国で相次いでいる。
日本産婦人科医会は今年5月、市町村の公費負担回数や金額、対象となる検査内容を調べ、都道府県ごとにまとめた。
それによると、助成回数は昨年5月調査では市町村の70%が「2回」と回答していたが、今年5月の調査では73%が最低基準の「5回」とし、事実上の「全回助成」(14回以上助成)も市町村数で26から103へと4倍増となった。
全回助成の市町村があるのは12都県で秋田、東京、静岡、愛知など東日本に目立った。
一方、全市町村が「助成5回以下」は福岡、佐賀、長崎、熊本、大分各県を含む17府県で、全回助成をできない理由は「財政難」。1人当たりの助成金総額も全国平均が約4万5000円で、約10万円とする県があるのに対し、九州は1万‐3万円台が大半だった。
助成対象も異なり、胎児の発育状況を調べる超音波検査は長崎県内で3回分、鹿児島県内で2回分が認められているが、九州の他県では対象外だった。
■妊婦健診
妊娠した女性が定期的に受ける問診や体重測定、血液検査など。出産まで14回程度が望ましく、費用は1回約5000‐1万円。健康保険は原則適用されず、経済的理由で受診を敬遠、出産間近に初めて医療機関を訪れる「飛び込み出産」も増えている。飛び込みは感染症などの既往症が分からず、危険が伴うことから、受け入れに消極的な医療機関が少なくない。
=2008/06/21付 西日本新聞朝刊=