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< 大学病院の医療レベル | メイン
2008.06.19 22:50 |  診療  |  仕事 / 職場  |  なし  | 推薦数 : 2

誤認逮捕する思考プロセスは正しい

刑事ものの映画を見ていると、

目つきの悪い刑事が、見た目が怪しい人物を見つけて

言いがかりをつける場面が良くある。

言いがかりをつけられた方が主人公の場合、

主人公の視点で物語が進むから、刑事はヒドイやつに見える。

でも、いつも思うけど刑事はぜんぜん間違っていないと思う。

そんな怪しいやつを見て見ぬふりをする刑事がいたら

そいつは無能で、市民に対してずっとひどいことをしてる。

 

見た目で怪しいと決め付けてしまう警官。

でも刑事視点で物語を紡ぐならば、

仕事の中でたくさんの救いのない事件を経験してるはず。

ちょっと怪し気だけど、強引に引っ張るまでもないと思ったやつが、

麻薬を売りさばいて、自分の守るべき人たちに害をなすとか。

そういうのって、一般人には稀有な経験でも、

刑事にしてみれば年がら年中ある話。

そもそも専門家というのは、普通の人にとって特殊な出来事を

当たり前のこととして生活するということ。

 

ドラマや本を読んでいると、離婚した刑事の話が出てくる。

中でもリアルなのは、人を疑うことに慣れすぎて

家でも妻子を疑うような目で見てしまって、

耐え切れなくなった妻子が家を出て行くという話。

たしかにありうる話だなと思う。

毎日、うそばかりつく犯罪者に囲まれてすごせば、

その人の人間観が、「人間には、上手にうそをつく人間と

うそが下手な人間の2種類しかいない」とかなってもおかしくない。

ふつうの人にとって特殊な出来事を当たり前として生活するあり方は

その人の日常生活を侵食する。

                       

だから僕は映画の中で誤認逮捕する刑事を否定できない。

彼の中には「こんなやつが犯人」という先入観があって

それがあるから人が守れたという実績があるはずだから。

もちろん、捕まえて長々と拷問しちゃうようなやつはまずい。

現実とのすりあわせを怠る怠け者という意味で。

映画に見る怠け者は、そんな自分を自己正当化しようとして、

トラブルを大きくして映画を盛り上げてしまう。

だから、自分の中の犯罪者の像と、現実の犯罪者を見合わせて、

いつだって自分を修正しないといけない。

自分のなかの先入観、イメージは、いつだって更新しなきゃいけない。

 

とにかく僕が言いたいのは、

誤認逮捕するやつがいるから、刑事はひどいとか、

先入観で判断するのはまずいとか、ありのままを見ようとか、

それは一般の人の考えとして正しくとも、

専門家としては間違っているということ。

人間はどんなに頑張ってもありのままになんて見れない。

人間に出来ることは、いつだって自分の先入観を、イメージを鍛えて、

実際の犯人の像に近づけていくことだけだ。

精神科医ならば、自分の先入観を鍛えて、イメージを膨らませ、

実際の患者さんのアタマに近づけていくことだ。 

映画の中で、誤認逮捕したのに拷問したとかそういうのは、

相手を逮捕しようと判断したプロセスじゃなく、

自分の先入観が現実と合わないのに、

その修正を怠ったことを責められるべきだと思う

学習し続けることを怠ったことが罪。

               

患者のありのままを見ろ!とか、犯罪者と決め付けるなとか。

そういう美しい素人の視点は、確実に現場に入ってきているし、

ちゃんと決め付けずに見る青年医師は増えている。

そういう青年刑事も増えているんじゃないかな。

サラリーマン刑事。間違いを起こさないけど成果も挙げない。

犯人を見つけても危なかったら手を出さない。

             

先入観を持たずに相手の話に耳を傾け

適切な知識を提供し、相手の自主性を尊重する。

こういう治療って美しくて、文句がつけにくい。

文句のつけにくい治療は、誤認逮捕みたいなことは起こさず

手がかからない軽症の人をきれいに治す。

そして本格的に手をかけなきゃならない患者は絶対に治せない。

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コメント一覧

こんにちはいつも興味深くエントリを拝見してます。
このエントリを読んでいて、「進化の反対は退化ではない、無変化である」
と言った漫画家を思い出しました。
失敗っていうものは成功の対極に存在するのではなく、
成功の過程に存在するものなのだろうと思います。
written by doxun / 2008.06.20 01:37
doxunさま
コメントありがとうございます。
僕も全く同意です。
失敗というのは「動いている」という一点で評価できるんだと思います。
written by なし / 2008.06.20 08:14

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