「最も高くて硬いガラスの天井は破れなかったが、千八百万のひびは入れられた」。米大統領選から撤退したクリントン氏は、撤退表明演説でこう述べた。
男女平等が建前の米国で、女性の社会での昇進などを妨げる見えない性差別の壁を「ガラスの天井」と呼ぶ。同氏が、この壁を破るのではと注目が集まった。
ここまで高くて硬くないだろうが、ガラスの天井は日本の企業社会にも根強くあるのではないか。
先日、ある外資系医療関連企業グループの研修会をのぞいた。女性登用を進めるための社員の意識改革が目的で、女性社員に加え管理職男性も参加した。
講師が挙げた「男性管理職が女性を登用しない先入観」は、「感情の起伏が激しい」「論理的な商談ができない」「体力がない」「突然退職される」「セクハラ(性的嫌がらせ)への過剰反応から敬遠する」だ。
参加者にアンケートをとった。「この先入観を感じる」女性社員は73%。「この先入観は実際のこと」と思う男性社員は52%。自分の周りには女性の同僚が多いが、これは偏見だ。
女性が昇進するには、仕事の実績以外に、偏見とも闘わなくてはならない。クリントン氏も指名争いで「女性に軍の最高司令官が務まるのか」と言われ、偏見と闘わざるを得なかった。
天井はこうした偏見でできている。破るのは女性ではなく、それをつくった男性の方だろう。 (鈴木穣)
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