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【社説】

国会閉幕  選挙へ頭を切り替えよ

2008年6月21日

 通常国会は衆参ねじれの「功と罪」を浮き彫りにした。醍醐味(だいごみ)の一方で、目を覆いたくなる対立劇もあった。与野党の相いれない部分は国民の判断に任せる時期だ。政策を練って衆院選に備えよ。

 異例ずくめの国会だった。ガソリン税の暫定税率が失効し、値下がりした。与党は二度も衆院再可決に踏み切った。野党は後期高齢者医療制度廃止法案を参院で可決した。そして現憲法下で初めて福田康夫首相を問責決議した−。

 振り返ると、異様ではあるが、記憶に残る国会といえよう。二院の多数派が違い、ともににらみ合う構図が続いたことがこの結果をもたらしたのは論を待たない。

 与党側はねじれに起因する国政停滞の問題点を指摘する。政府の意向が再三退けられて、日銀人事は迷走を重ね、副総裁一人、審議委員一人は欠員のままだ。自民党の伊吹文明幹事長は野党のかたくなな姿勢を「主権者の国民に対する背信行為だ」となじった。

 しかし、与党も参院で少数派であるという現実を見くびっていなかったか。従来の国会運営手法で乗り切れるはずはなかった。野党を説得する努力の跡は乏しく、結局は衆院再可決でよしとする姿勢はいただけなかった。民主党も度を越して緊張や対立をあおろうとする面があった。

 ねじれのプラス効果はあった。

 官僚が独占し封印されがちだった情報が野党の追及で次々と明らかになった。道路特定財源のあきれる無駄遣いは最たるものだ。論戦で追い詰められた首相が道路財源の一般財源化方針を打ち出したのも、緊張国会の賜物(たまもの)だろう。ガソリン値下げも参院選での民意を背景に、野党が一時的にせよ、生活重視の公約を実現したと国民に受け取られた。

 「霞が関支配」の構図を突き崩そうと、与野党が政府の国家公務員制度改革基本法を修正の上、成立させた意義も大きかった。やればできるのである。

 年金や医療制度など暮らしに絡んだ政策では、与野党が接点を見いだせなかった。行き着くところは財源問題だ。消費税率アップの是非をめぐって、掘り下げた議論が展開されなかったのは残念だ。道路財源の一般財源化に向けた与野党協議も進んでいない。

 歩み寄りの余地のなかった点は有権者に判断を委ねるしかない。各党は実のある公約を練り上げ、次の審判に備えてほしい。政策抜きの「田の草取り」は困る。

 

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