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【社説】

新コミッショナー 夢ある将来像、示せ

2008年6月21日

 誰もが関心を寄せるスポーツといえば、やはりプロ野球だ。国民みんなの財産とも言えるだろう。就任が決まった新コミッショナーには、その将来構想をぜひ明確に示してほしい。

 昨年二月以来、退任した前任者が引き続いて代行を務めるという変則事態が続いてきたプロ野球のコミッショナー。オーナー会議で前駐米大使の加藤良三氏の就任が承認され、長い空白にやっとピリオドが打たれた。正式就任は七月一日。野球協約改定で権限が強化される新コミッショナーが山積する課題にどう対処していくのか、その手腕にはかつてない注目が集まることになる。

 プロ野球は変革期に差しかかっている。四年前の球界再編騒動では球団消滅という衝撃に直面し、根本的な改革の必要性が声高に叫ばれるようになった。が、何についても歩みは遅く、改革の実が挙がっているとは言いがたい。人気低落傾向や球団経営の厳しい状況などは変わらず、待ったなしの取り組みがさまざまな面で求められている。

 そうした状況のもとで何より大事なのは、再興に向けてプロ野球をどんな方向に導いていくのかという将来構想の確立ではないか。

 球界も格差社会だ。球団間の資金力の差が拡大し、戦力不均衡も目立っている。これが進めば勝負の面白みがそこなわれ、またしてもファン離れを招くだろう。格差を埋め、優勝争いを活性化する方策を球界挙げて考えねばならない時期が来ている。

 国際的な課題も多い。トップ選手の流出が続く中、世界戦略を進める米メジャーリーグとの関係をどう再構築していくのか。アジア各国との連携はどうすべきか。これらの将来像も急ぎ模索していく必要がある。

 権限強化で最高執行責任者としての役割を担うとされる新コミッショナーには、この正念場で大いにリーダーシップを発揮してもらいたい。待ったなしの課題はすべて球界全体として考えるべきもので、個々の利益にのみこだわっていてはならない。コミッショナーが先頭に立って、公平な視点から共存共栄策を打ち出していくべきだろう。

 そのためにも、まず夢のあるビジョン、方向性を明快に示してほしいところだ。

 多くの人に愛されるプロ野球は大切な公共の財産である。コミッショナーには、その守り手、担い手としての高い意識を求めたい。

 

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