日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の経済連携協定(EPA)などを自然承認するために、6日間延長された第169通常国会は、21日に閉幕する。
今国会は衆参ねじれ状態の下で、本格的な予算審議が行われた。歳入関連の改正租税特別措置法の成立が遅れて、ガソリンにかかる揮発油税の暫定税率の期限が一時切れるなど、国民生活にも大きな影響が出た。日銀総裁人事を巡る迷走もあり、ねじれの弊害が浮き彫りになった。
評価できる点もある。福田康夫首相が道路特定財源の一般財源化にかじを切ったのは、民主党などが道路特定財源の無駄づかいを徹底的に追及したからだ。衆参ともに与党が多数を占めていれば、いくら批判を浴びても、道路特定財源の仕組みは温存されていただろう。
内閣による幹部職員の一元管理などを柱とする国家公務員制度改革基本法は、与党と民主党の修正協議を経て成立した。与野党が問題意識を共有し、成立させる意欲があれば、ねじれ国会でも法案処理が進むことを実証した。
しかし揮発油税のような対決法案の処理になると、国会の機能は著しく低下する。結局、与党は衆院で3分の2以上の多数で再可決する選択肢しかなかった。参院で民主党が審議を引き延ばすため、衆院で再可決が可能になる「60日ルール」を使わざるを得なくなる。参院での審議は形骸化し、時間ばかりかかる。
衆参の権限が対等な国会同意人事の問題点も明白になった。民主党は武藤敏郎日銀副総裁(当時)の総裁昇格案などを拒否したが、「財政と金融政策の分離」などの反対理由には説得力がなかった。党利党略を優先させた印象は否めない。
白川方明総裁が就任するまでの間、総裁が空席となる異常な状態に陥った。2人の副総裁のうち1人はいまだに空席である。
池尾和人慶大教授を日銀政策委員会審議委員に充てる同意人事を巡る民主党の対応も不可解だった。国民新党が「郵政民営化を推進した」という理由で池尾氏に難色を示したため、当初の賛成方針を白紙に戻し、参院での採決は見送られた。
同意人事で後任が決まるまでは、現職がとどまれるようにするなどの法改正は急務である。
参院で首相問責決議が可決された不正常な状態で、今国会は幕切れとなるが、政治の停滞は許されない。次期臨時国会では、与野党双方に政策本位で競う「ねじれ国会」のあるべき姿を探るよう求めたい。