東京都杉並区の区立杉並第十小学校で6年生の中村京誠(きよまさ)君(12)が屋上の天窓から転落死した事故で校舎を設計した建築士が20日、毎日新聞の取材に応じ「屋上には児童が立ち入らないと区教委側から何度も説明を受けたので、天窓の周囲に安全柵を設置しなかった」と証言した。
証言したのは建築設計事務所「アルコム」(世田谷区)1級建築士、船越徹さん(77)。小学校や高校など10校以上の校舎設計を担当したという。
船越さんは83年、区教委担当者との打ち合わせで「屋上は鍵をかけて管理するので児童は出入りしない」と説明を受けた。屋上立ち入りは学校建築上の重要ポイントのため、念押ししたが答えは同じだった。ところが今回の事故で、屋上を授業で使用していたことを知って驚いた。「児童が立ち入るなら柵を作ったのに」と憤慨する。
天窓を設置したプラスチック製造販売メーカー(中央区)によると、天窓のアクリル製の覆いは約750キロの荷重に耐える設計だが「人が乗り1点に力が集中すると壊れる可能性がある」という。強度は10年で約1割劣化するため、ホームページで防護柵や天窓内側の下に落下防護ネットを設置するよう求めていた。
同小には、屋外にせり出した2階屋上にも天窓が5基あるが、児童が出入りすると聞いたため安全柵(高さ約1.2メートル)を設計した。船越さんは「児童が立ち入ると聞けば、他校と同様に天窓に手すりや柵を必ず設置した。残念だ」と話す。
また東京消防庁は20日、天窓を突き破って転落する事故が05年4月以降の約3年間で、都内で15件発生したと発表した。けがをした15人のうち11人が12歳以下だった。【内橋寿明、古関俊樹】
毎日新聞 2008年6月21日 2時30分(最終更新 6月21日 2時30分)