田植えが終わったばかりの水田や、緑の濃さが増してきた公園の木々を眺めながら出勤する。心が落ち着く。
植物は食べ物になり、また建材や紙などに姿を変えて人々の生活を支えてくれる。近ごろは二酸化炭素の吸収源としても期待が高い。よく役立ってくれるものだと感心する。
工芸家稲本正さんが著書「森と生きる。」で、「葉っぱはなぜ緑なのか」と問うている。葉緑素が緑だから、褐藻や紅藻でなく緑藻が今の植物の先祖だから、といった常識的な答えには満足しない。
太陽光は赤、黄、緑、青など七色に分解できる。葉はこのうち緑色を反射しているのだが、エネルギー量でいえば実は緑色の部分が一番高い。葉は効率のいい緑を逃がし、割の悪い他の色の部分を利用していることになる。どうしてなのか。
考えた末、稲本さんは「葉は自分だけ生き残れば良いと思っている訳ではない」と結論する。エネルギーの最も多い緑の部分を反射して動物にも力を分け与えるために、葉は緑なのだ。植物は、動物との共生を目指す存在なのだと。
純科学的考察というより稲本さんの哲学と解釈すべきだろう。異論もあるかもしれない。それでも納得できた。その植物を、人間は長く収奪する一方だった。もっと感謝し、寄り添っていかなければと思う。