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2008年6月21日

◎整備新幹線 交付税措置率引き上げは自然

 北陸など整備新幹線の建設費の地元負担に占める交付税措置比率が、今年度分から引き 上げられる方向になったことを歓迎したい。ここ数年で自治体の財政事情が激変したのだから、交付税措置比率も、それを考慮して見直すのが自然だろう。今後の引き上げ幅の検討でも、沿線自治体の意向をくんだ結論が出ることを期待したい。

 現在、整備新幹線建設費の地元負担の九割は起債で賄うことができ、その50%を交付 税措置する仕組みとなっている。建設費の負担割合を国三分の二、地元三分の一とすることを決めた一九九六年の政府・与党合意で、地元負担については「所要の交付税措置を講じる」としたのを受けて定められたものである。

 当時は沿線自治体もこの仕組みを受け入れたのであり、それを今になって変えることを 批判する向きがあるかもしれない。だが、あの時、三位一体改革で地方財政が現在のような苦境に陥るなどと誰が予想したであろう。状況の変化に応じた交付税措置比率の引き上げもまた、所要の手当てと言えるのではないか。

 具体的な交付税措置比率について、富山県などは85%とするよう要望している。交付 税の総額が決まっている以上、「満額回答」は難しいかもしれないが、引き上げ幅の調整に当たる総務省は、出来る限り負担軽減を図る方向で知恵を出してもらいたい。石川県も、富山県や他の沿線自治体とともに同省の背中を押すつもりで声を上げ続けてほしい。

 もちろん、交付税措置比率が引き上げられたからといって、沿線自治体が地元負担の重 しから解放されるわけではない。既に県内全区間の工事が進んでいる富山県はもとより、石川県も、金沢以西の延伸論議の結果次第では相当の負担を背負い込むことになる。両県には、乾いたぞうきんを絞る覚悟で行財政改革を推進することを重ねて求めておきたい。さらに、後で「交付税措置比率の引き上げは税金の無駄遣いだった」と言われないよう、新幹線効果を最大限に引き出すための手も着実に打っていきたい。

◎テロ国家指定解除へ 「拉致」取り組み変えねば

 米国が、北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除の手続きに入る方針を明言したことで対 北朝鮮外交で日米の軸足の相違がはっきりしてきた。

 日本は拉致問題の解決を優先させているが、米国は核問題の解決を第一に動いている。 日本では拉致問題が「大状況」だとすると、米国では反対に「小状況」のようだ。

 日米の軸足の違いは、基本的には米国が拉致問題を日朝間の問題としていることに起因 する。指定解除が行われたとしても、米国はこれまで通り日本の立場を支持するだろうが、できれば日朝双方で片付けてほしいというのがホンネではないか。

 となると、拉致問題の取り組みもこれまで通りというわけにはいくまい。

 ライス米国務長官によると、北朝鮮が核計画を申告したとしても、それが信用できるも のかどうかを米国が検証し、信用できるとなってはじめて解除の手続きに入る。指定解除とともに対敵国通商法の除外も行われるようだ。

 米議会に指定解除に疑問を抱き、反対する動きもあるため、日本国内ではその米議会を 頼みにする考えもあるが、指定解除するかどうかは大統領の特権であり、議会が反対しても行われるということを知っておきたい。

 米国が重要視する核の無能力化は、日本にとっても北朝鮮の核から国土を守る意味があ り、拉致問題に劣らず重要な問題だ。したがって、指定を解除したとしても、日米関係を良好に維持する努力が日本に求められる。

 その場合、拉致被害者家族にいっそうの忍耐を強いることになる可能性がある。政府は その場しのぎのような対応をやめ、家族たちのいらだちを鎮めながら、一緒になって問題解決に取り組まねばなるまい。その覚悟ができているのだろうか。

 北朝鮮のような、信用しがたい独裁国家が相手の場合、代理交渉ではだめだ。そう考え て二度も北朝鮮へ乗り込んだのが小泉純一郎元首相だった。福田康夫首相もあのような決断が避けられまい。


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