慰霊の日を前に宜野湾市立志真志小学校(喜納裕子校長)で20日午前、同体育館で「集団自決」を題材にした創作劇「ヒルサキツキミソウ」を上演した。劇で「集団自決」の問題を取り上げることについて同校には抗議のメールなどが届いていたが、同校は予定通り上演を決めた。
幸せな家族が「集団自決」に追い込まれる姿を児童らが熱演した。
創作劇「ヒルサキツキミソウ」は現代の子どもたちが、「集団自決」の犠牲になった子どもの霊が宿った石を通し、幸せな家族が追い詰められた末に「集団自決」に至るという戦争の実相を知る内容となっている。
戦前の家族が楽しく暮らすシーンでは舞台も観客の児童も笑顔で一緒になって歌を歌ったが、一転して「米軍に捕らえられると何をされるか分からない」と追い詰められ、優しかった父親が家族を手榴弾(しゅりゅうだん)で死に至らせる場面になると全員が舞台を見つめ、涙をぬぐう観客もいた。
最後に父親が家族を殺さざるを得なかった悔悟と謝罪の気持ちを込めて戦後から63年も育て続けた「ヒルサキツキミソウ」の歌を全員で歌い、戦争の悲惨さと家族の愛情、命の大切さをかみしめた。
喜納校長は「命の大切さ、平和の尊さを感じてほしいと劇に取り組んだ。劇を通し子どもたちは平和をつくることの大事さと表現する楽しさを感じてくれたと思う」とあいさつした。
脚本を手掛けた宮城淳教諭(55)は「児童たちに平和の大切さがいくらかは伝わったと思う」と話した。ナレーターとして劇に参加した宮城ひよりさん(6年)は「集団自決」について「平和なのが幸せ。戦争で集団自決をさせる人がいたんだなと思った」と感想を述べた。
保護者の岩田あゆみさん(36)=宜野湾市=は「集団自決については知っていたが、子どもを持ってみて初めて分かる悲しさがあった。家族でいることの幸せを実感させてもらって、家族で命の大切さを話し合うきっかけづくりになる」と話した。元教諭の安慶名恵美子さん(63)=宜野湾市=は「新聞報道を見て学校を応援しようと駆け付けた。沖縄戦を真正面から受け止めて子どもたちと取り組む平和劇を応援したい」と激励した。
「集団自決」を扱ったこの劇については、学校側に抗議や中止を求めるメールが寄せられていたが、報道後も抗議の電話などがあり学校は対応に追われた半面、激励も多く寄せられたという。
(琉球新報)
2008年6月20日