デジタル放送の新録画ルール「ダビング10」の開始に向け、情報通信審議会の情報通信政策部会に設けられている「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」の第40回会合で19日、権利者側から譲歩案が提案され、ダビング10の開始日を7月4〜5日をめどに調整していくことで合意がなされた。
ダビング10は、同検討委員会においてデジタル放送におけるコピー制御のルールの見直しを進めていく中で、9回までのコピーを認める新たなルールとして関係者が合意し、2007年8月に情報通信審議会の第4次中間答申に盛り込まれたもの。
当初は、2008年6月2日をダビング10の開始予定日としていたが、私的録音録画補償金制度の問題で権利者側とメーカー側が対立。ダビング10の開始にあたっては、「クリエイターが適正な対価を得られる環境を実現すること」を基本的な姿勢とするとしていたため、補償金制度についての意見の対立から、ダビング10の開始が延期される事態となっていた。
19日に開催された検討委員会では、これまでの議論をまとめた中間報告の骨子案が事務局から示され、これについて議論が行なわれたが、骨子案でもデジタル放送におけるコピー制御のルールについての「今後の進め方に関する提言」の部分は「調整中」とだけ書かれた白紙の状態になっているなど、ダビング10の開始に向けては合意が得られない状態となっていた。
委員会でも当初は、ダビング10の開始に向けては合意が得られていないことを確認する発言が相次いだ。6月17日には、文部科学大臣と経済産業大臣がそれぞれ、ダビング10の開始に向けてブルーレイディスク機器・媒体を補償金制度の対象に加えることで合意したことを表明。一方、こうした動きに対しては、「努力には感謝する」としながらも、「これをもって合意したとは言えない」という発言が委員から挙がった。
関係者間での合意形成に向け、検討委員会でもフォローアップワーキングを4月11日に設置していたが、担当した中村伊知哉氏からも「断続的な意見交換を続けているが、合意には達していない。関係者一同、早期解決を願っているが、合意には至らずという報告しかできず、申し訳なく思う」という報告がなされた。
これに対して、検討委員会の主査を務める村井純氏が、「8月8日からは北京オリンピックが始まる。これがデジタル放送にとって1つのタイミングになるというのは、コンセンサスが取れていると思う」と述べ、期日の確定に向けてアイディアを出してほしいと委員に呼びかけた。
これに対して、実演家著作隣接権センターの椎名和夫氏が発言。「ダビング10はこの委員会が生み出した最初の成果であり、実現に至っていないのは残念。答申に盛り込まれた『適正な対価の還元』というのは当たり前の話で、メーカーに申し上げたいのは『ただ乗りや食い逃げはしないでほしい』ということ。しかし、この問題で膠着状態が続くのは何の意味もなく、悪影響が出るだけ。よって、事ここに及んでは、ダビング10については補償金の問題と切り離して、期日を確定する方向でまとめていただけるようお願いしたい」と提案し、ダビング10の開始に向けて大きく踏み出す形となった。
また、椎名氏はダビング10については補償金の問題と切り離すが、私的録音録画補償金制度については合意の形成に向けた期待感を答申に盛り込むこと、クリエイターへの対価還元についても情報通信審議会の課題として議論していくことの2点を求めた。
この提案を受けて、村井純主査がデジタル放送推進協会(Dpa)や電子情報技術産業協会(JEITA)の各委員に対して、期日の調整を依頼。Dpaの関委員は「正直、急転直下の決定で」としながらも、「開始に向けた準備は整っているが、確認や視聴者への周知も必要で、開始に向けては2週間程度は必要というイメージ」と発言。正確な期日については今後の調整次第となるが、7月4〜5日を目安としてダビング10を開始することで調整していくことで合意に達した。
関連情報
■URL
デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/digitalcontent.html
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( 三柳英樹 )
2008/06/19 21:15
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