世界で年間約970万人が、5歳の誕生日を迎えられずに命を落とす。また、飢えが原因で約5秒に1人の子どもの命が消えている。国連児童基金(ユニセフ)によると、子ども(18歳未満)の総数は約22億人、うち約3億8000万人が最も貧しい国で暮らす。生き延びるため、大きな苦難を強いられる子どもたち。「世界難民の日」の20日、アフリカ北東部・スーダンの病院に入院する1歳3カ月の男の子の話を報告する。
ユニセフが支援する同国南部ジュバの「アルサバ子ども病院」。薄暗い病室のベッドで、サンデー・ポニちゃんが点滴を受けながら寝ていた。重度の栄養失調とコレラに苦しんでいる。体重はわずか6キロ。腕は折れそうなほど細い。目からは生気が失われ、体は微動だにしない。母マリエアさんが不安そうに見守る。
マリエアさんの夫は約2年前に病死。子どもは5人いる。畑で穀物を育てて暮らしていたが、昨年は不作で収穫はほとんどなく飢えに直面した。
マリエアさんは野生の果物を探しては子どもに与え、自分は何も食べずに水を飲んだ。だが、母乳が出なくなり、生後間もないサンデーちゃんは栄養失調に陥った。約70キロの道のりを2日間夜通しで歩き続けて病院にたどり着いた。
医師は「抗生物質を与えているが状況はどんどん悪くなっている」と顔を曇らせる。点滴の針を刺す時でさえ、サンデーちゃんは泣き声をあげられなくなっていた。
病院での食事は持参が原則。付き添うマリエアさんは、隣の人の食事が幸運にも余れば分けてもらっている。彼女は懇願した。「子どもの命だけは」。それ以上は何も言わずにうつむいた。【スーダン南部で隅俊之、写真・西村剛】
毎日新聞 2008年6月20日 東京夕刊