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Eveningフォーカス:ゴミ屋敷=育児放棄 西南学院大准教授が調査

 ◇福岡県内の30世帯--不登校・予防接種なし顕著

 福岡県内の18歳未満の子供がいる家庭で、家の敷地内や室内にゴミをため込み生活に支障をきたす「ゴミ屋敷」が、30世帯に上ることが西南学院大の安部計彦(かずひこ)准教授(児童福祉)らの調査で分かった。このうち6世帯で子供が学校に行っておらず、9世帯で予防接種などを受けさせていなかった。安部准教授はゴミ屋敷がネグレクト(育児放棄)に密接に関連していると指摘している。【高橋咲子】

 安部准教授のゼミが07年7~8月、県内の全78市区町村の児童福祉担当者を対象に無記名で実施したところ、35市区町村から実態を踏まえた回答があった。30世帯(15カ所)のうち、親が昼間不在▽ゴミを片付ける意思がない▽家庭への介入を拒否する--の3項目に該当する24世帯について分析した。

 ゴミ屋敷では、就労率が7割(17世帯)にもかかわらず、公共料金を滞納している家庭が8割(19世帯)に上った。子供との関係では、25%(6世帯)が学校に行っておらず、3~6年間も登校していない子供が2人いた。また、予防接種など保健上のケアを受けさせてない9世帯のうち、公共料金滞納が8世帯に上るなど、さまざまな形で世間とのかかわりを避ける傾向が浮かび上がった。

 親が社会ルールを無視することが、子供の成育にも影響を与えている。ゴミ屋敷があると回答した15カ所中、衣服や体が不潔だったり、基本的な生活習慣の遅れがある事例がそれぞれ9カ所であり、低体重・低身長の事例も2カ所であった。

 一方、実態を「把握していない」と回答した自治体も7カ所あった。安部准教授は「清潔な環境は子供が健全に育つためのベースとなる。存在を把握していない自治体は子供のネグレクトを見逃している可能性もある。行政の福祉的な目配りが必要だ」と話している。

 ◇玄関に衣類の山、風呂も物あふれ--「家と言えぬ」状態

 「隣の部屋から異臭がする」との連絡を受け、民生委員がある民家を訪れると、玄関まで衣類や靴が散在していた。台所のコンロ台は物置き場と化し、居間のテーブルに簡易コンロがあった。衣類はかごに入れたまま長期間にわたって放置。風呂場にも物があふれ、住居とは到底言えないものだった。

 福岡県久留米市では07年度の虐待相談が120件あり、うちネグレクトに関する相談が半数近くの50件。同市家庭子ども相談課の浦部伸子技術主査は「身体的・性的虐待などと異なり、ネグレクトの親は程度の差こそあれ、『ゴミ屋敷』状態に陥っていることが多い」と指摘する。

 こうした家庭の多くは、予防接種や、4カ月から3歳まで4回ある定期健診も子供に受けさせていないという。理由を尋ねると、母親の多くは「バスを使ってまで、なかなか行けない」「他の兄弟を連れてはいけない」と釈明するという。

 浦部さんは「子供が食事を十分にとっていなかったり、言葉の遅れがある場合が多い。民生委員や児童委員、学校とともに、『ゴミ屋敷=ネグレクト』という共通認識をもって対応にあたるようにしている」と話している。

毎日新聞 2008年6月20日 西部夕刊

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