院長の矯正日記●ホーム
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2006/07/31 (月)  歯垢とう蝕
2006/07/30 (日)  強い力が歯に作用した際に歯周組織に生じる反応
2006/07/29 (土)  弱い力が歯に作用した際に歯周組織に生じる反応
2006/07/28 (金)  歯の移動の仕方
2006/07/27 (木)  クローズドロック例の開閉口運動
2006/07/26 (水)  復位性関節円板前方転位例の開閉口運動
2006/07/25 (火)  正常例における開閉口運動
2006/07/24 (月)  CADIAX compactを用いた顎運動の診査
2006/07/23 (日)  low angle classUの咬合再構築
2006/07/22 (土)  high angle classUの咬合再構築
2006/07/21 (金)  low angle classVの咬合再構築
2006/07/20 (木)  high angle classVの咬合再構築
2006/07/19 (水)  U級T類上顎前突症例治療における注意点
2006/07/18 (火)  U級不正咬合はどのように咬合再構築を行えばよいか(2)
2006/07/17 (月)  U級不正咬合はどのように咬合再構築を行えばよいか(1)
2006/07/16 (日)  U級咬合の骨格的特長
2006/07/15 (土)  大臼歯の咬合関係の経年的変化について
2006/07/14 (金)  咬合平面と下顎の前後的位置および開大との関係
2006/07/13 (木)  成長発育に伴う咬合平面の変化と顎関係(U級、上顎前突)
2006/07/12 (水)  成長発育に伴う咬合平面の変化と顎関係(正常な場合)
2006/07/11 (火)  垂直高径のはたす役割
2006/07/10 (月)  順次誘導咬合のはたす役割
2006/07/09 (日)  スピーの彎曲、ウイルソンの彎曲のはたす役割
2006/07/08 (土)  上顎前歯のはたす役割
2006/07/07 (金)  下顎前歯のはたす役割
2006/07/06 (木)  犬歯のはたす役割
2006/07/05 (水)  小臼歯がはたす役割
2006/07/04 (火)  第一大臼歯がはたす役割
2006/07/03 (月)  上顎前歯、犬歯の傾きと顎関節
2006/07/02 (日)  成長とともに開咬になる症例
2006/07/01 (土)  咬合と顎関節(矯正治療の役割)


2006.07.31 (月)  歯垢とう蝕


矯正治療に際して、装置を装着いたしますと、どうしても歯磨きがしづらくなります。注意して、丁寧に歯の手入れをされませんと、う蝕ができたり、歯周炎が発症したりしてまいります。
そこでまず、う蝕について本日から、数日にわたり書いてみます。
この方のように、歯磨きがうまくできておらず、多くの歯垢が蓄積しているにもかかわらず、う蝕が発生しない患者様に臨床で出会うことがあります(A)。この患者様ではレイダーチャートからわかりますように、う蝕の原因菌であるmutans streptococciの量が顕著に少ないのが特徴的です。
逆に、一見、口腔清掃状態が良いにもかかわらす、う蝕が多くできている患者様もおられます。
要は口腔内の細菌叢をよく調べることが大切であると考えます。
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2006.07.30 (日)  強い力が歯に作用した際に歯周組織に生じる反応


一方、歯に強い力が作用した場合、圧迫側の歯根膜内の血管は、押しつぶされて血流がなくなって、一部の歯根膜は壊死してしまいます(Bの赤い部分)。
血流がなくなり、歯根膜内に破骨細胞が現れることが出来ないため、歯槽骨内の骨髄側から破骨細胞があらわれ歯槽骨の内部から骨が吸収され壊死した歯根膜に到達します。
吸収が歯根膜の部分に及ばない時期には、歯はほとんど移動しません。そして、吸収が歯根膜におよぶと、突然、歯が大きく動きます。このように内部から歯槽骨が吸収されるその仕方を「穿下性吸収」といいます。この場合強い痛みを伴い、歯もぐらぐらと揺れます。矯正治療で作用する力が強すぎる場合はこのような現象がおこり、歯根が吸収される場合もあります。ですから、歯に最適な弱い力を加えて痛みを抑え歯を安全、確実に動かすことが肝要です。
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2006.07.29 (土)  弱い力が歯に作用した際に歯周組織に生じる反応


Aに示しますように歯は歯根膜というクッションの働きをする繊維により歯槽骨に結びつけられて支えられています。通常の機能力〈咀嚼などにより発生する)では歯は移動しませんが、矯正力などの移動に最適な力が作用しますと歯は歯槽骨の中を移動していきます。この現象を利用してがたがたに並んだ歯を移動して、きれいに配列します。
弱い最適な強さの力が作用した際、周囲の歯周組織にはどのような反応が生じているのでしょうか?
Aの赤い四角の部分を拡大したものをBに示します。
歯に力が加わると、力の作用方向の歯根膜は圧迫され歯根膜腔は狭められます(圧迫側)。すると歯根膜と歯槽骨が接する部分に骨を溶かす働きもつ破骨細胞があらわれ歯槽骨表面を吸収するので、狭められた歯根膜腔が次第に広げられ元に戻ります。
一方、反対側では歯根膜がのびて牽引されます(牽引側)。
すると歯槽骨表面に骨芽細胞という細胞があらわれ、新しい骨を添加していき歯根膜腔が次第に狭められていき元に戻ります。
このように,骨の吸収と添加により、歯根膜の幅が一定に保たれながら歯が移動します。
弱い力が作用した際に歯根膜側から骨が吸収される仕組みを【骨の直接性吸収】と言います。この場合、痛みや不快感、歯の動揺は少なくゆっくり歯は移動していきます。

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2006.07.28 (金)  歯の移動の仕方


歯に力を作用させると歯が動くことは今から2000年以上も前からCelsusによって指摘されていました。長い年月がたった現在においても歯に力をくわえて移動する方法は、変わっていません。効率よく歯に力を加える方法は、いろいろ考えられています(矯正用インプラントの応用など)がいまだに他にもっと有効な手段が明らかになっていないのが現実です。
本日は、歯の移動の仕方についてまとめてみます。
A:傾斜移動:歯を、歯根長さの根尖側約3分の1あたりの点を回転中心として近・遠心または唇頬・舌方向に歯冠を移動します。
B:歯体移動:歯全体を歯の長軸と平行に移動します。
C:回転移動:歯を長軸を中心に回転します。
D:圧下移動:歯全体を長軸に沿って根尖方向に移動します。
E:挺出移動:歯全体を長軸に沿って歯冠方向に移動します。
F:根尖移動:歯冠の近・遠心(唇頬・舌)軸を中心に、根尖を唇頬・舌(近・遠心)方向に移動します。
実際の矯正治療では以上の移動をいくつか組み合わせて行います。



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2006.07.27 (木)  クローズドロック例の開閉口運動


厚い関節円板後方肥厚部が下顎頭の前下方に位置した場合は、下顎頭の前方移動を機械的に阻害し開口障害をおこすします。
開閉口運動で関節円板が正常な位置に戻らない場合をクローズドロックといいクリック音は生じません。したがって、ヒンジアキシスの経路に乱れは生じませんが移動範囲の制限が認められます。
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2006.07.26 (水)  復位性関節円板前方転位例の開閉口運動


関節円板は、その構造から前内方に転位しやすく、血管や神経などを豊富に含む関節円板後部結合組織がひきのばされ関節円板後方肥厚部が下顎頭の前方に転位しています。
このような症例を関節円板前方転位例といい、開閉口運動でクリック音がして、関節円板が下顎頭の上の正常な位置に戻る症例(復位性)と戻らない症例(非復位性、クローズドロック)とにわかれます。
本日は復位性関節円板前方転位例の開閉口運動について書きます。
開口時、下顎頭が前方に移動する際、血管、神経をまったく含まない関節円板後方肥厚部を圧迫し、さらにこれを超えて下顎頭が前進する時、クリック音が発生して、関節円板の中央狭窄部に下顎頭がはまり込みます。閉口時に下顎頭が関節円板後方肥厚部を超えて後退する時、ふたたびクリック音が発生して下顎頭が関節円板からはずれます。
このクリックは相反性クリックと呼ばれています。
このクリックが開口運動の比較的早い位置で発生するものをearly clicking type(A)、比較的遅い位置で発生するものをlate clicking type (B)といいます。
クリック音発生時にヒンジアキシスの経路に乱れが生じます。
一般的には、症状が比較的軽いもの、顎関節内障の既往が短いものがearly clicking type、逆に、症状が比較的重いもの、顎関節内障の既往が長いものがlate clicking typeといわれています。
閉口時のクリック音はいずれの場合でも、閉口末期で発生します。
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2006.07.25 (火)  正常例における開閉口運動


顎関節機能を考慮した矯正治療が今,求められています。
まず顎関節内障のない正常例について書いてみます。
正常例では、厚さ約3mmの関節円板後方肥厚部は下顎頭の直上に位置しています。
厚さ約1mmの関節円板中央狭窄部は、開口開始点では関節結節の後方斜面と下顎頭前上方斜面との間にあり、開閉口を通じて関節円板と下顎頭は動きをともにします。すなわち、外れることはありません。
○印は開閉口運動にともなうヒンジアキシすなわちス(蝶番軸)の経路をあらわしています。
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2006.07.24 (月)  CADIAX compactを用いた顎運動の診査


下顎が三次元的に偏位すると下顎頭と関節円板と相互関係が変化し筋肉活動のバランスに変化が生じます。逆に、筋肉バランスに変化が生じると、下顎の偏位が引き起こされます。このような状態では下顎の運動パターンに変化が認めらます。すなわち、下顎の運動パターンの変化を診査することで、関節部に生じている病態を推察することができるのです。
下顎頭の動きをリアルタイムに見ることができる装置にCADIAX Compactがあります。下顎の前歯にトレーを瞬間接着剤で固定し、リファレンスABフェイスボウをセットします。トレーシングインインスツルメントをトレーの先端に取り付けます。フラッグとスタイラスを取り付ければセット完了です。患者様へのセットがとても簡単です(A)
(B:)顎関節や筋肉に問題がない正常な下顎頭の運動軌跡を示します。矢状面からみて左右対称でなめらかな凹型の軌跡をえがき運動量の制限や過剰が認められず運動の往路と復路で大きなずれを生じることもなく運動の開始点(RP)に戻ります。
(C:)両側関節円板が外れたままで元に戻らない顎関節内障の運動軌跡を示します。運動量の制限が認められます。
(D:)比較的長期にわたる右側の関節円板の復位を伴わない顎関節内障の運動軌跡を示します。正常な場合(B)との区別がむずかしいですが、最大開口位での運動軌跡が下向きであることが特徴的です。下顎頭の運動を規制している靭帯が損傷されて下顎頭が関節結節を超えて過剰に前方運動していることがわかります。
(E:)下顎頭が後方偏位した症例では、関節円板後方肥厚部に下顎頭が位置しています。この位置(DRP:Deranged RP)より開口が始まると初期には上に凸の軌跡を描き下顎頭が関節円板の中央狭窄部にはまり込み、その後は下顎頭が関節円板にはまりこんで動き凹型の軌跡を描きます。
(F:)このような症例で閉口していくと少し前方位(TRP:Therapeutic RP)で終わります。この位置から開口した場合、クリッキングはしません。このTRPの下顎位で咬頭嵌合が得られるように歯を移動してやると、下顎頭は関節円板の中央狭窄部に位置することとなります。
(G)正常な症例では、開閉口や前方運動などで下顎頭が左右にずれる軌跡は現れませんが下顎が左右に偏位した症例では、左右にずれる軌跡が認められます。
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2006.07.23 (日)  low angle classUの咬合再構築


この、骨格パターンでは、上顎臼歯部の垂直高径が増加せず上顎咬合平面が急傾斜を示しています。上顎臼歯が低位にあることから、咬合支持が喪失し、下顎は前方に適応できず、オーバーバイトが大きい下顎が後退した骨格性U級の不正咬合になっています(a)
治療では上顎臼歯部のディスクレパンシーはあまり大きくないことも多く、垂直高径を増加することが困難なため第三大臼歯や第二大臼歯の抜歯は通常おこないません。上顎骨は水平的には余裕があり、前歯部には空隙が見られることも多いので、この空隙を閉じて唇側に傾斜した前歯を舌側に傾斜させます。下顎の大臼歯は低位にある上顎大臼歯に適応して過剰に萌出している場合が多いので、圧下したり第三大臼歯を抜歯してできたスペースを利用して遠心に直立します。圧下および遠心に直立した下顎臼歯とかみ合うように上顎臼歯を挺出させ、上顎咬合平面を平坦化します。これに伴い下顎は前方に適応してまいります。(b)(c)(d)
さらに、上下顎の小臼歯部を挺出し垂直高径を増加させ咬合を安定化させます(e)

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2006.07.22 (土)  high angle classUの咬合再構築


この、骨格パターンでは、上顎臼歯部の垂直高径が増加せず、上顎後方部咬合平面が急傾斜しており、その結果、低位にある上顎臼歯と咬み合うために、下顎臼歯部が正常より挺出しています。下顎枝の垂直方向の成長は正常より劣っているため下顎下縁平面が急傾斜を示すhign angle caseとなっています。急傾斜した上顎後方咬合平面に適応して下顎は後退し、顎関節障害に陥りやすいタイプです(a)
治療では上顎前歯を後方移動するためのスペースを確保する目的で、上顎第三大臼歯あるいは、上顎第二大臼歯を抜歯して、前方方向に傾斜した小臼歯、大臼歯を遠心に直立します。また急傾斜した上顎後方部咬合平面を平坦化するために、上顎臼歯部を積極的に挺出します。大臼歯の抜歯に関して、上顎第三大臼歯が低位にある低年齢では、抜歯が困難ですので、第二大臼歯を抜歯します。第三大臼歯の傾斜や歯根の形成程度を評価して、正常に萌出できる可能性が大きい場合は、第二大臼歯を抜歯します。(b)
下顎では上顎同様の方針にしたがって下顎第二大臼歯か下顎第三大臼歯の抜歯後に臼歯部の遠心直立および積極的な臼歯部の圧下をおこない後方部咬合平面を平坦化して下顎を前方に適応させます(c)
また、上下顎小臼歯部も積極的に挺出させ、垂直高径の増加をはかり、上顎第一小臼歯の舌側咬頭近心内斜面に下顎の後方運動時のガイダンスを与えることにより、後方に転位した下顎を前方に適応させます(d)
さらに、咬合平面を平坦化するために上顎臼歯の積極的な挺出をおこない、咬合支持を安定化して治療が終了します(e)
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2006.07.21 (金)  low angle classVの咬合再構築


この、骨格パターンでは、上顎臼歯部の垂直高径が増加せず上顎後方咬合平面が急傾斜を示しています。上顎臼歯が低位にあることから、咬合支持が喪失し、下顎は過剰に前方回転し、o-オーバーバイトが大きい反対咬合になっています(a)
治療では上顎臼歯部のディスクレパンシーはあまり大きくないことも多く第三大臼歯や第二大臼歯を抜歯しなくてすむ場合も多いようです。下顎の大臼歯は低位にある上顎大臼歯に適応して過剰に萌出している場合が多いので圧下したり遠心に直立して下顎前歯を舌側に傾斜させるのに必要なスペースを創るために第二大臼歯あるいは第三大臼歯を抜歯します。大臼歯部の咬合干渉を除去してやることで下顎が後方に適応してきます(b)
さらに、上下顎の大臼歯咬合面にレジンなどの樹脂を盛り、咬合をあげて小臼歯を挺出させ、上下顎小臼歯の咬合接触が得られれば大臼歯に盛ったレジンを徐々に除去しながら臼歯の緊密な咬合を確立します。すなわち、大臼歯および小臼歯を積極的に挺出して下顎の時計回りの回転を生じさせるわけです(c,d,e)
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2006.07.20 (木)  high angle classVの咬合再構築


再度、各種不正咬合の骨格パターン別に、咬合再構築の目標についてまとめてみます。
この、骨格パターンでは、上顎臼歯部のディスクレパンシー(臼歯部での歯の配列スペースの不足)が大きく臼歯が正常より歯槽骨から押し出されて咬合平面が平坦化しています。下顎枝の垂直方向の成長は正常より劣っているため下顎下縁平面が急傾斜を示すhign angle caseとなっています(a)
治療では上顎臼歯部のディスクレパンシーを解消し、押し出し現象により平坦化した咬合平面を急傾斜にし下顎を後方に適応させます。ディスクレパンシー改善のために上顎臼歯部の抜歯が必要となります。上顎第三大臼歯が低位にある低年齢では、抜歯が困難ですので、第二大臼歯を抜歯します。第三大臼歯の傾斜や歯根の形成程度を評価して、正常に萌出できる可能性が大きい場合は、第二大臼歯を抜歯します。(b)
下顎臼歯部についても上顎同様の方針にしたがって臼歯部ディスクレパンシー解消の目的で、下顎第二大臼歯か下顎第三大臼歯の抜歯後に臼歯部の遠心直立をおこないます。この時点では、臼歯部は開咬の状態になります(c)
さらに、上下顎小臼歯部を圧下することにより、前歯部の被蓋を深くし、臼歯開咬を改善します(d)
第二大臼歯を抜歯した場合は、第三大臼歯が正常に萌出まで経過を観察して、治療が終了します(e)
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2006.07.19 (水)  U級T類上顎前突症例治療における注意点


U級T類上顎前突症例では通常、咬合高径が低く、オーバージェット、オーバーバイトが大きく、下顎骨が後退し、顎関節部で圧迫が認められます(a)。f
上顎の臼歯を挺出させ、咬合高径を増加させ、咬合平面を平坦化し、下顎を前方に適応させることにより顎関節部の圧迫を解消することが治療目標となります(b,c)
小臼歯などの中間歯を抜歯すると、前歯は後退し、臼歯は前の方に移動し、咬合高径は減少して関節部の圧迫がさらに悪化することになります(d,e,f)
矯正治療では、前歯や臼歯がお互いに引き合いながら移動するため、上に述べたように正確に歯を動かすことはきわめて難しいのです。
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2006.07.18 (火)  U級不正咬合はどのように咬合再構築を行えばよいか(2)


U級不正咬合では、上顎を後方臼歯を挺出させ、上顎歯列後方部の垂直高径を増加させ、下顎後方臼歯を後方に直立することにより後方咬合平面を平坦化し、下顎を前方に適応させることが治療目標となります(A)
上顎後方臼歯を挺出し上顎前歯を圧下するためにはDAW(Double Arech Wire)を使用します。前歯4本に0.016×0.022インチの角ワイヤーを用いてセショナルアーチを屈曲します。主線は0.016インチのラウンドワイヤーにループを屈曲して、左右第一大臼歯のブッカルチューブに挿入します。前歯部のセクショナルアーチの断端を活性化した主線に引っ掛けます(B)
小臼歯および第一大臼歯を挺出させるためには(C)のように小臼歯および第一大臼歯にいれたセクショナルアーチにループを屈曲した主線をロー着して用います。
その結果、前歯は圧下しながら、舌側に移動します(D)
また、前歯を移動したい方向により、前歯部のセクショナルアーチの長さを変えます。
すなわち、前歯根の回転中心より前方にフックを屈曲した場合は、前歯は圧下しながら、唇側に傾斜します(E-a)
前歯根の回転中心付近にフックを屈曲した場合は、前歯は傾斜をせずに圧下します(E-b)
前歯根の回転中心より後方にフックを屈曲した場合は、前歯は圧下しながら、舌側に傾斜します(E-c)
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2006.07.17 (月)  U級不正咬合はどのように咬合再構築を行えばよいか(1)


小臼歯抜歯にて治療した後、顎関節障害の発現のために再来院した症例の治療変化を観察することで、U級咬合で下顎が後退し開大した症例をどのように治療していけばよいかについて書いてみます(Meawを用いた矯正治療Uより)。
A-a:11歳、初診時。上顎咬合平面は前方と後方の2つにわかれており、下顎は後退し開大しています。上下顎の歯は、臼歯前歯ともに前方に傾斜し小臼歯部より前方が開口しています。典型的なU級ハイアングル開咬症例です。
A-b:上下第一小臼歯の抜歯後、矯正治療にて咬合が改善されています(14歳)。
A-c:矯正治療終了後9年の23歳時、顎関節の障害を訴えて再来院しました。
B-a:矯正治療終了時のセファロトレース。第一小臼歯の抜歯による矯正治療で、骨植がしっかりした大臼歯に影響をうけて術後の咬合平面は術前の後方咬合平面の傾斜にほぼ等しく、術前の咬合平面の急傾斜が改善されておりません。
B-b:23歳時に再来院した際のセファロトレース。
B-c:矯正治療後14歳時と23歳時のセファロトレースの重ね合わせ。咬合平面は矯正治療後、さらに急傾斜となり、それに伴い下顎は後退し、開大して下顎頭も平坦になってきています。
この症例では、第一小臼歯を抜歯したためにもともと急であった後方咬合平面にそって歯が配列されてしまい、臼歯部での咬合支持が不十分で下顎が後退し下顎頭部に過剰な圧が作用し顎関節障害が発現したと考えられます。

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2006.07.16 (日)  U級咬合の骨格的特長


骨格的U級の不正咬合は、ヒトの約3分の1に発生し高率に顎機能障害を発現します。
AにT級骨格とU級骨格の典型的な頭蓋骨を示します。
T級骨格では、咬合平面がフラットで、咬合支持が確立されており咬頭嵌合位において、下顎頭と関節かの間にスペースが認められます。
一方、U級骨格では咬合平面が前方と後方の2つに区別され後方咬合平面が急であり、スピー彎曲が急で下顎頭軸が後方に傾斜し、下顎頭と関節かの間にはほとんどスペースが認められません。
Bに示しますように急な傾斜の後方咬合平面に適応して、下顎は後退し開大する傾向が強く認められます。
従ってU級の症例においては上顎の後方の咬合高径を増加し、咬合平面を平坦化し、下顎を前方に適応させ、下顎の開大を防止することを念頭に治療を進めなければなりません。
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2006.07.15 (土)  大臼歯の咬合関係の経年的変化について

下顎成長にとって上顎後方咬合平面、すなわち咬合高径の増加が重要な働きをしている。
小児の顎顔面骨格の発育において、いったい、いつごろから咬合のU級関係が定着するのであろうか?
神奈川歯科大学の佐藤貞雄先生の研究によると、図に示すように、第一大臼歯および前歯が萌出を完了したVAの時期に、すでに47パーセントの個体で咬合関係はT級になっている。残り53パーセントはU級であるが、その半数以上が側方歯の萌出時期のVBでT級関係となり最終的な咬合関係もT級となる。
しかし、この時期、VBにT級の咬合関係が達成されなかった個体のほとんどは、永久歯列期になってもU級のまままである。
以上のことから、下顎後退型の症例では、混合歯列期からの早期の咬合管理が重要となる。すなわち、特に上顎後方部分の咬合高径を増加させ、下顎を前方に位置させることが治療目標となる。
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2006.07.14 (金)  咬合平面と下顎の前後的位置および開大との関係


咬合平面と下顎の前後的位置および開大との関係について、興味深い報告があります。
上顎の咬合平面のうち、とくに後方部咬合平面(UOP)が下顎の位置に大きく関係していることがわかっています(A)。
UOPの値が小さいほど、APDIの値は小さくなっています。すなわち、UOPの傾きが急なほど、下顎が後退していることがわかります(グラフB)
またUOPの値が小さいほどPP-MPの値が大きくなっています。すなわち、UOPの傾きが急なほど、下顎が大きく開大することがわかります(グラフC)。

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2006.07.13 (木)  成長発育に伴う咬合平面の変化と顎関係(U級、上顎前突)


正常な症例と同様に6歳時に第一大臼歯が萌出した直後の咬合関係は1/2級です。しかしこの症例では、以後、T級の咬合関係が獲得されることはなく最終咬合は左右とも1咬頭U級(full classU)になっています(A)。
成長発育の変化を調べるために作成されたセファログラムの重ね合わせをBに示しています。正常なT級の咬合関係が確立された昨日の症例と比較して、今日の症例では上顎の後方部分での咬合高径が増加せず、咬合平面が次第に急傾斜を示してきているのがわかります。そしてこれに呼応するように、下顎下縁平面も急傾斜となり下顎は前方に適応できず骨格はU級のhigh angle caseとなっています。
以上のように、上顎骨の後方部分の咬合高径の増加が下顎骨の前方成長に重要な働きをしていることがわかります。

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2006.07.12 (水)  成長発育に伴う咬合平面の変化と顎関係(正常な場合)


ヒトの成長期の上下顎の第一大臼歯の咬合関係の変化をAに示しています。
6歳の第一大臼歯が萌出直後、咬合関係は1/2U級であり、7歳で下顎が一度、左に偏位して右がT級になり、さらに8歳で下顎がふたたび右に偏位することで左右ともT級に変化しています。その後は14歳まで咬合関係は安定しています。
この間の咬合平面及び、下顎下縁平面の変化をBに示しています。成長とともに、歯列前方部より後方の臼歯部で垂直高径が増加し、咬合平面は平坦化してきます。また、下顎下縁平面の傾きが減少してくることから、下顎が前方に回転してきてT級の咬合関係が獲得されていることがわかります。これは、正常な顎発達を示す個体にみられる変化です。
明日は正常なT級の咬合関係が達成されない個体における変化について書いてみます。

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2006.07.11 (火)  垂直高径のはたす役割


図に示します下顔面角(LFH)(∠ANS-Xi-PM)は、下顎枝高径の増加と歯の挺出による歯槽骨の増加のバランスで決定されます。下顎枝高径が増加し、下顎骨成長の前方成分が垂直成分より勝る場合、LFHは小さくなります。一方、歯の挺出による歯槽骨の増加で下顎の時計まわりの回転が引き起こされ下顎は後方へ回転しLFHは大きくなります。すなわち、下顎枝高径増加はLFHへの負の要因、歯の挺出はLFHの正の要因といえます。
LFHの日本人の平均値は49°です。平均より小さい症例をlow angle case,大きい症例をhigh angle caseといいます。上下顎骨の前後的位置関係から下顎前突、上顎前突がありますので、不正咬合は以下の4つに分類されます。
@下顎前突low angle case
A下顎前突high angle case
B上顎前突low angle case
C上顎前突high angle case

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2006.07.10 (月)  順次誘導咬合のはたす役割


天然歯を観察しますと、側方運動時に下顎の機能咬頭(頬側咬頭)が滑走する上顎の歯の頬側咬頭の舌面の滑走面は第一大臼歯から、順次急になっています。側方運動時、まず上顎第一大臼歯の誘導路により両側の第二大臼歯が離開します。次に第一大臼歯よりも急な第二小臼歯の誘導路によって両側の第一大臼歯以降の歯が離開します。このように、後方歯から前方歯にむかって徐々に傾斜が強くなる上顎歯の滑走面により側方歯群は後方から順次離開します。最終的にはもっとも急な滑走面をもつ犬歯により誘導され、下顎のすべての歯が離開します(A)
側方運動時の犬歯の舌面の傾斜は反対側の矢状顆路角(44°)に等しく、犬歯で滑走する際、閉口筋の筋活動がもっとも小さくなることが報告されています(B)
以上のことから、矯正治療において、第一大臼歯から犬歯にかけての滑走面の傾斜の設定を注意深くおこなうことが大切だと考えられます。
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2006.07.09 (日)  スピーの彎曲、ウイルソンの彎曲のはたす役割


スピーの彎曲、ウイルソンの彎曲はともに臼歯部に存在する彎曲で、強くなると下顎が前方運動や側方運動した際に臼歯が離開しにくくなります。
スピーの彎曲は下顎の犬歯の尖頭から、小臼歯、大臼歯の咬頭をむすんだ彎曲です。彎曲の強さ(スピーの彎曲の半径)は下顎頭から咬合平面までの距離(DPO)に逆相関しています。すなわち、DPOが短い乳歯列期では、スピーの彎曲の半径は長くなり、スピーの彎曲は弱いのですが、成長とともにDPOが長くなるにつれスピーの彎曲の半径は短くなりスピーの彎曲は強くなってまいります。このように成長につれて、スピーの彎曲が変化することにより、偏心運動(前方や側方運動)における臼歯の離開程度が調節されているのです。
ですから、矯正治療で、ただやみくもにスピーの彎曲を平坦にするのではなく、臼歯の離開程度を見ながら、治療をおこなうことが大切であると思います(A)
ウイルソンの彎曲は左右の頬舌咬頭を連ねた側方彎曲です。
犬歯、第一小臼歯部で上に凸、第二小臼歯部で直線的、第一大臼歯、第二大臼歯部で下方に凸になっています(B)
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2006.07.08 (土)  上顎前歯のはたす役割


下顎頭の蝶番軸と下顎前歯の切端とを結ぶ線(closing Axis)に対して垂直で、前後的にはA点とPogを結ぶAPOラインより約3mm前方、また上下的にはXiポイントとリップシール(上唇と下唇が接する点)を結ぶ線上に切端が一致するよう配置した下顎前歯を基準に上顎前歯を配置します。上顎前歯はAPOラインより4-5mm前方に位置させます(A)
下顎の前方運動に際しては、上顎前歯の舌面を下顎前歯の切端が滑走して臼歯が離開しますので、上顎前歯舌面の傾きが非常に重要となります。上顎前歯舌面の傾き(OG:Occlusal Guidance)は矢状顆路角(SCI:Sagital Condylar Inclination)と密接に関連しています(B)。日本人のSCIの平均は約44°なので、ODは、平均で約54°となります。
ODがSCIより15°以上、急になると、前方運動において、下顎の後退が誘発され、関節円板は前方に移動し、顎関節にクリックが発現しやすくなると考えられます(C)
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2006.07.07 (金)  下顎前歯のはたす役割


今日は、下顎前歯が機能的咬合においてはたしている役割について書いてみます。
正常といわれる咬み合わせを有する個体を調べてみますと下顎頭にある蝶番軸と下顎前歯の切端とを結ぶ線(Closing axis)に対して、約90°の角度で下顎前歯は萌出しています。この条件を満たせば、上下の前歯がかみ合ったとき、下顎前歯の歯軸方向に力が作用することになります。歯軸方向に力が作用すると、歯が唇側や舌側に傾斜することはありません。また上下的にはXiポイントとリップシール(上唇と下唇が接する点)を結ぶ線上に下顎前歯の切端が一致しています(A)。また、前後的にはA点とPogを結ぶAPOラインより約3mm前方に位置しています(B)
また、上顎前歯の舌側斜面のF1とF3を結ぶS1の領域で下顎前歯が接触する場合がもっとも安定します。矯正治療で、咬み合わせが浅すぎて、F3とF2を結ぶS2の領域で接触する場合は咬み合わせが安定しないので注意を要します(C)
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2006.07.06 (木)  犬歯のはたす役割


今日は、犬歯が機能的咬合においてはたしている役割について書いてみます。
類人猿の時代より、威嚇や攻撃に使われていた歯で歯根も長く、強靭な歯であった犬歯は(A)、現代では、歯列の中に入り込み審美的な役割をはたしている(B)
下顎が側方に動く時、犬歯萌出前は、側切歯と小臼歯が滑走して下顎の動きを誘導しますが、犬歯萌出後は、犬歯が中心となって、下顎の動きを誘導するようになります(C)。上下顎の犬歯が接触する場合、上下の小臼歯、あるいは、大臼歯が接触する場合と比較して、有意に咬筋や側頭筋などの閉口筋の活動が有意に減少することが報告されています。すなわち、ストレス発散のためおこると考えられている歯軋りなどの際、上下顎の犬歯が主に接触することにより、強大な閉口筋の筋活動が減少し、歯質や歯周組織の破壊に予防的に作用すると考えられます。
正常な個体では上顎犬歯の舌面の誘導面の角度と関節結節後部斜面の角度はほぼ一致しています(D)。矯正治療で、犬歯を舌側に傾けすぎると、犬歯を排除するようなブラキシズムが誘発され、犬歯の異常な唇側への傾斜がひきおこされたり、歯周組織の破壊が生じる場合もあるので、慎重に咬み合わせを作っていく必要があります。
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2006.07.05 (水)  小臼歯がはたす役割


今日は、小臼歯が機能的咬合においてはたしている役割について書いてみます。
上顎第一小臼歯の歯根はAに示しますように頬舌的に細長く、しかも近心に向かって湾曲しています。すなわち、後方への力を効率よく支える構造になっています。
また、に示しますように上顎小臼歯舌側咬頭の近心斜面に沿って下顎小臼歯の頬側咬頭が滑走し下顎が後退するのを防止しています。すなわち、上顎小臼歯の舌側咬頭の近心斜面は下顎を前方に位置付けるのに重要な役割をはたしています。
小臼歯や大臼歯など、側方に位置する歯はすべて、同様な働きをすることはできますが、下顎を前方に支える反作用として、歯にくわわる力は関節から一番遠い第一小臼歯が最も小さくなりますC。つまり、小臼歯がもっとも下顎を前方に支えるのには適した歯であると考えられます。
ですから、矯正治療で小臼歯を抜歯するか否かの決定する際には、さまざまな要件を検討する必要があります。
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2006.07.04 (火)  第一大臼歯がはたす役割


矯正治療では、後退しやすい下顎を前方に保持できるような咬み合わせをつくることが大切です。これから、数日にわたって、第一大臼歯、小臼歯、犬歯、上顎前歯、下顎前歯の咬み合わせを矯正治療でどのように作っていけば良いのかについて書いてみます。MEAWを用いた矯正治療Uの本と日々の臨床での経験をもとに書きとめてみます。
A:に示すようにclassTで、しっかりと上下の第一大臼歯をかませることが大切です。下顎第一大臼歯の頬側の遠心咬頭の遠心斜面が上顎第一大臼歯の斜走隆線の近心斜面に接することにより、下顎が後方に落ちこむのが防止され下顎が前方に保持されます。
B:に示しますように上顎第一大臼歯は、わずかに近心に回転し斜走隆線の延長線が反対側の第二小臼歯の頬側と舌側の咬頭を通過するようにします。
C:に示しますように、下顎が側方に運動する場合、下顎第一大臼歯の頬側近心咬頭長頂は上顎第一大臼歯の近心辺縁隆線のF1からF2へと動きます。また、上顎第一大臼歯の頬側咬頭は、頬の粘膜を排除するのにも役立ちます。上顎第一大臼歯の近心舌側咬頭は、下顎第一大臼歯の中心かにしっかり咬みこみ咬合を安定させています。


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2006.07.03 (月)  上顎前歯、犬歯の傾きと顎関節


上顎前歯や犬歯が唇側に傾斜している上顎前突(classU-1)では関節結節の傾斜も、classT(上顎前歯や犬歯の傾斜が正常な場合)と比較してゆるくなっている。一方、上顎前歯や犬歯が舌側に傾斜している上顎前突(classU-2)では関節結節の傾斜は正常な場合と比較してきつくなっている。不正咬合であっても顎関節に問題ない症例では、顎関節と咬合がうまく適応しあって、スムーズな顎運動が可能となっている。矯正治療では、審美的な要求から咬合を変化させるわけで、治療により顎運動機能に問題が起こらないか常に注意を払わなければならない。すなわち、classU-1の症例では、上顎前歯、犬歯を舌側に傾斜しすぎないよう注意を払わなければならない。classU-2で、顎関節症状がある症例では、上顎前歯や犬歯を唇側に傾斜させてやることにより、症状の改善が見られる場合がある。
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2006.07.02 (日)  成長とともに開咬になる症例


成長とともに開咬になってしまう症例に時に出会いま。A:13歳B:15歳
口腔内を診てみますと通常、はえてくるべき時期に第二、第三大臼歯が萌えてこれずにいます。パントモ写真を撮影してみますと、骨内に歯がひしめきあっていて、すでにはえてしまっている第一大臼歯が正常な位置より骨から押し出されています。咬む力が強いlow angle caseでは、第一大臼歯が骨から押し出されることは少ないのですが、咬む力が弱いhigh angle caseでは、第一大臼歯が骨から押し出されてしまい、下顎が時計回りに回転して開咬になってしまいます。
このような症例では、早い時期に第三大臼歯を抜歯し臼歯部のスペース不足を解消してやる必要があります(MEAWを用いた矯正治療U参照)。
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2006.07.01 (土)  咬合と顎関節(矯正治療の役割)


下顎に付着する筋(咬筋、内側翼突筋)や下顎頭や関節円板に付着する筋(外側翼突筋)および靭帯や関節包などの軟組織は全体として、下顎を前方に保持している。関節円板の中央のくぼんだ部分に下顎頭がきっちり入り込み頭蓋骨にかたちづくられた関節のくぼみの前方に位置している。人間は直立歩行をしているので、下顎は後退しやすい性質があり、筋や軟組織による下顎の前方保持機構は強力なものではないので、咬合が不調和になると、下顎は後方に落ち込みやすくなる。矯正治療では、すべての歯を動かして咬合をつくっていくので、その責任は、非常に重いと考えられる。例えば、上顎前歯を舌側に傾斜させすぎると、下顎の後退が引き起こされ、これに対し、生体は筋などの緊張状態を変化させて、保障しようとする。筋緊張の誘発により、さまざまな顎関節症状が引き起こされることとなる。それゆえ、常に、下顎位置の変化に気を配り、注意深く矯正治療を進めることが大切である。
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