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「本」と「末」は本当に転倒しているのか

2008/06/17 23:00

 



「臓器漂流」を読んで(4)


患者にとっては、
どちらが「本」で、どちらが「末」ではないと思う・・・





(続きです)

『第四章 移植法を見直すべし』

著者の主張は、「無償で提供してくれる善意のドナーを増やすこと」「そのためには、法施行10年でわずか60数例(6月現在は70例)」しか実施されていない現在の臓器移植法(移植制限法と揶揄されている)を改正すべきである・・」に尽きる。国会議員の怠慢以外の何ものでもないとも主張されている。


私もこれには同様の思いである。そのとおりだと思う。
著者のこの思い・主張は、産経新聞の社説「主張」やその他のコラムでも随所に見られる。
社説内容、改正法の内容については、これまで何度も掲載されているのでここでは省略させていただく。


-『本末転倒』-
しかし著者はいう。『「脳死あるいは心停止後に臓器を提供しようとする善意のドナーを増やす努力を忘れて病腎移植に走るのはいかがなものか」と前に書いた。なぜそう書いたのか。病腎移植の支持派に「移植する臓器が不足しているから病腎移植を進めるべきだ」との主張があり、その主張が本末転倒に当たると思うからである。ちなみに、根本的で重要なこととささいでつまらないこととを取り違えていること。それが本末転倒の意味である』


一貫した著者の主張は「日本でのドナー不足を解消していくには、まず現行の臓器移植法を改正して善意のドナーを増やすこと」であることは前にも書いた。
「臓器漂流」の第一章から最後まで、随所にそれが記述されその思いが貫かれている。


しかし、「修復腎移植が本末転倒である」との考え方だけは、どうしても私には納得できず反論せざる得ないのである。


なぜ脳死議論が「本」で、修復腎移植は「末」でありささいでつまらないこと・・・なのか。言われることは納得できない。
これについては、過去ブログ「届かなかった思い(8)」にも既に取り上げているが再度掲載させていただきたい。


19/2/12(月)
【野菊】本末転倒の「病腎移植」2月9日付け 
の記事のおっしゃる臓器移植法を改正する必要があるというご意見には当方もそのとおりであると思います。
ただ、病腎移植の問題を本末転倒と言われることには納得できません。


>病腎移植を「つまらない」とまでは言わない。新たな発見があるだろうし、その医学的価値は認めたい。だが、いま、移植医療において重要なのは、脳死になったら自らの臓器を提供しようとする善意のドナーを増やすことである。それには移植制限法とまで言われる臓器移植法を国際基準まで改正する必要がある。その努力もせずに病腎移植を第3の移植と主張するのは、本末転倒である。


とのこと、臓器移植法が改正されドナーになる方が増えることが根本的な解決になることはそのとおりでしょう。
でも現実はなかなか改正されないではないですか。

貴方の「その努力もせずに病腎移植を第3の移植と主張するのは、本末転倒である。」はどなたに対する批判でしょうか?

万波医師にですか、報道特集にですか、医療関係者ですか、移植学会ですか、国会議員ですか。

少なくとも圧倒的なドナー不足の中で第3の道との信念のもと医療を行った医師に対して、臓器移植法の不備やその改正努力の怠慢を責めることにはならないと強く思います。
病腎移植を正式に認めて行えるようにすれば、年間2千件ほどの透析患者が救えると言われています。ドナー不足解決のりっぱな一つの方法ではありませんか。

医師は高度な医療技術でもって患者の命を助けるのが仕事です。その中で見いだされようとしている第3の道を取るに足らない議論のように主張されることには、貴方のりっぱなご意見は理想とは思いますが、患者の現実を本当は知らない机上の建前のご意見です。
国会議員や医師会に対して臓器移植法改正を貴方が今後も訴えていただければ誠にありがたく思います。


差出人 :  イザ!サポート <
support@iza.ne.jp>
送信日時 :  2007年2月13日 13:03:13
件名 :  ご意見ありがとうございます
いつも、イザ!をご利用いただきありがとうございます。
このたびは、記事への真摯なご意見をいただきまして、大変ありがとうございます。実
際にご家族に患者の方がおられるとのこと、非常に貴重なご意見と受け止めております。
つきましては、この記事がもともと掲載されておりました、サンケイ・エクスプレスの
編集部にメールを転送させていただきました。
どうか今後とも、イザ!をよろしくお願い申し上げます。




そして数日後、木村論説委員から、私の携帯に直接お電話をいただいた。
約40分ほど会話をしたが、概要は次のような内容であった。

私は「臓器移植法改正」はもちろん大切だと思う。しかしながら、それが遅々として進まない現状である中、修復腎移植により仮に一人でも二人でも移植が増える、試算では年間1千から2千個の腎臓が利用できるかも知れないと言われている。
そうであれば、これも患者の治療の選択肢の一つとして実施すればいいのではないでしょうか」「どっちが本でどっちが末ではないはず・・・」というような事を言ったと思う。

それに対して木村様は「病腎移植ではだめなんです。臓器移植法を改正すべきです・・・」と言われたと思う。残りの時間もお互いほとんどその繰り返しであった。最後まで意見が平行線のままだったと記憶している。


最後に、締め切りの都合もあったのだと思うが、豪州ブレスベーンでは44例に上る修復腎移植が行われていることが昨年の7月頃に判明したこと、今年1月の全米移植外科学会・冬季シンポジウムでの論文がトップ十に入る高い評価を受けたこと、また最近では「修復腎移植を考える超党派の会」が修復腎移植の容認と医師や宇和島2病院の処分についても必要ない旨の提言したこと等は、本書は触れていない。
問題発覚から1年と8ヶ月が過ぎた。その間にこのような重要な事実が積み重なっている。


本書に一つだけ物足りない点があるとすれば、前述のとおり昨年の今頃と比べずいぶん不明な点がはっきりしてきたこと、新たな事実があったことを残念ながら記述されていなく、また論評もないことである。
今後このような事も考慮に入れられた上で、何かの機会に論じていただくことをお願いしたい、と要望とともに最後に思うのである。


ずいぶんいろいろと読後の感想を書いたが、本書が現在の移植医療問題を冷静かつ正面から問いかけた素晴らしい良書であることには間違いない。

一人でも多くの方が本書を読んでいただくことをお勧めしたい。

なお私の感想に非礼な点があれば、若輩者の意見の一つと思って広い心でお許しいただきたい。


以上




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