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歌舞伎:夏祭浪花鑑(シアターコクーン) 人間の情念の爆発見せた勘三郎

 ベルリンとルーマニアで上演した作品の凱旋(がいせん)公演。串田和美演出・美術。

 「お鯛茶屋」からの通しで、発端に団七のけんかによる入牢(ろう)の経緯を補足している。上演2時間強で大詰めまで運ぶスピーディーな展開だ。

 団七による義平次殺しでは、義平次の駕籠(かご)を追った団七が「三婦内」を飛び出し、一気に「長町裏」に至る。

 その間をつなぐ和太鼓(上田秀一郎)の演奏が疾走感をかきたてる。スポットライトのように用いた手燭(てしょく)に団七と義平次の形相が浮かびあがり、背景に張り巡らせた暗幕に巨大な団七の姿が投影される演出が効果的だ。暗幕が落とされると、一瞬にして高津宮の祭りの群衆が現れ、団七は客席に姿を消す。

 「九郎兵衛内」で団七と徳兵衛の表情に陰影をつける照明、大詰めの捕り方を相手にしての「屋根」まで、場面ごとに工夫があり、飽きさせない。

 勘三郎の団七が、追い詰められた人間の情念の爆発を殺し場で見せ、大詰めまで全体を引っ張った。橋之助の徳兵衛が義兄弟の契りを結んだ団七への思いをうまく出し、弥十郎の三婦に老〓客(ろうきょうかく)らしい重みと華がある。義平次の笹野高史に小心で後ろめたげな風情があるのもおもしろい。

 扇雀のお梶、亀蔵の佐賀右衛門、勘太郎のお辰(19日まで、20日から七之助)、七之助の琴浦(19日まで、20日から芝のぶ)、芝のぶの磯之丞(19日まで、20日から勘太郎)。29日まで。【小玉祥子】

毎日新聞 2008年6月19日 東京夕刊

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