□ 筆者の立ち位置 よく誤解されるのですが、 私は、IPv6反対原理主義、つまり、IPv6反対を目的として それだけのために活動する、そんな連中ではありません。 むしろ、IPv6反対原理主義反対者です。 それと同時に、IPv6原理主義、つまり、IPv6推進それ自身を 目的としてる連中、それには反対です。 つまり、IPv6反対原理主義反対者であると同時に、 IPv6原理主義反対者です。 また、IPv4延命原理主義でもありません。 むしろ、IPv4延命原理主義反対者です。 わたしが唯一主張したいのは、 コストベースで再検討しろ、それだけです。 IPv4延命策、IPv6移行策、それぞれをコストベースで検討すべきです。 移行コスト、延命コスト、どちらが低いのかを検討すべきです。 その結果、v4延命になろうとv6移行になろうと、正直どーでもいいです。 皆さんは、オカジマ = 頑迷なv6反対の闘士、とか思い込んでるみたいですが、 まったく違います。v6移行のほうがコストが低い、となれば、 何も考えず移行します。Super Teredo とかなんか、 なんでもいいんで、なんか凄い移行技術でませんかね。 わたしが唯一反対するのは、 結局移行したが、あとから考えたら延命のほうが安かったとか、 結局延命したが、あとから考えたら移行のほうが安かったとか、 そんな事態が将来起きることです。 これだけは絶対に反対です。 コストベースで両者を検討し、安いほうにしましょう。 ・・・と、主張しても、どうせ、v6原理主義者は私を個人攻撃してくるでしょう。 あなた方にひとつだけ聞きたい。 v6移行のほうが安い、という根拠は? ちなみに、わたしは、v4延命のほうが安い、という根拠を持っていません。 単なる直感や感覚としてはそう思い込んでいますが、それじゃあ根拠になりません。 ただ単に、唯一主張したいのは、コストベースで再検討しよう、それだけです。 唯一、わたしが何かの原理主義に染まっているとすれば、 それはコストベース原理主義です。 インターネットなんて繋がってればいいんだから、 学術的に考えた場合、どれだけ汚くてもどれだけ理念に反しても、 とにかく安いほうが正義。 学術的なんてどうでもよく、現実的に安いほうが正義なんです。 私は、学術的な理想の価値を否定はしませんが、そんなの、 慶応SFCと会津大学のキャンパスの中だけでやってもらえばいいし、 それを体験したいなら、そいつらだけそこに学士入学しろって。 新技術を実験する、体験する、学習する、研究する、開発する、、、 すべて問題ないですが、そんなもんSFCの中だけでやれ。 日本中でいきなり壮大な実験をやるのは迷惑です。 □ IPアドレス税はどうなったんだ? いろいろ騒いだおかげで、この手のことを聞かれることがありますが、 結局、いまのところの結論としては、多分(というか絶対)ムリです。 別の言い方をすれば、いまのままでは「政治的に」不可能だろう、ということです。 さまざまな対話を通じて(付き合ってくれた諸兄に感謝します)、 理論的に正しいことはいっそう確信が強まりましたが、 それと同時に、現実的には政治的な理由で困難なことも理解しました。 ただし、それは、現行のJPNIC体制では、ということであって、 たとえば、総務省などが動けば5秒で導入できます。 IPアドレス税がムリな理由は、JPNIC / ICANN が何かを決定し実行する 能力や権限をまったく持っていない上、そもそも持とうとする気すらない、 ってだけのことです。政府レベルで動けば五秒で実行できます。 IPv6推進なんかより、こっちをやりませんか? > 総務省。 すくなくとも、v6推進は、v4延命コストとv6移行コストを比較し、 v6移行のほうがコストが低いことを証明してからにしてほしいわけですが。 繰り返し言いますが、私は、IPアドレス税原理主義者でもなく、 v6反対原理主義者でもなく、コスト比較原理主義者なんで。 ただ、じゃあ、私に総務省を動かせる力があるか、というと、 それはまったく完璧にムリなんで、ようはIPアドレス税 = 現状ではムリ、となります。 □ v4は枯渇するか まず、これはまったく言葉遊びの次元ですが、 厳密な意味では決して枯渇しません。 石油のように、使ってしまえば消滅するものですら、 非常に厳密な意味では決して枯渇しないのに、 なぜ、IPアドレスのように、消滅しないものが枯渇するのでしょうか。 ひとつダメ押しで聞けば、 野球の背番号は、「枯渇」しますか? たとえ、背番号を二桁以下に制約して、 そして、いままで累計で何人登録しても、 しかし、選手が瞬間最大風速で最大99人以下なら、 決して枯渇しないんですよ。 ようは、瞬間最大風速で何人か、が「理論的には」すべてなんです。 もちろん、40億個というのは世界人口以下ですし、 一人が複数台のインターネット機器を所有する現状からは、 不足を想定するかもしれませんが、 アクセスする側のIPアドレスが、NATによって容易に共有でき、 アクセスされる側のIPアドレスすら、仮想ホスティングなどにより 共有できることを考えれば、 40億のIPアドレスが「枯渇」することは理論的には絶対にありえないのです。 結論を申し上げますと、IPv4アドレスの枯渇(厳密には、新規アドレスの枯渇)が 現実の問題となっているのは、 ICANN/JPNICのアドレス割り当てがあまりに不合理で歪んでいるからであって、 決して、IPv4アドレスが原理的に不足しているからではありません。 このアドレス割り当ての歪みさえ是正すれば、 莫大な移行コストをかけてIPv6に移行する必要性などまったくありません。 注) 石油の埋蔵量が減少すると、価格が高騰する。 よって、最後、1リットル1億円ぐらいになるかもしれないが、 とにかく、非常に厳密な意味では永遠に枯渇はない。 去年の缶ビールは入手できないが、 100年前のビンテージワインはいつまでも現存するのと同じ原理。 もし、石油が枯渇するとすれば、 代替エネルギーにより、石油に何の価値もなくなったとき。 むしろこういう状況のほうが、だれもまじめに保存しないので、 意外と枯渇しやすい。 といっても、そうなったらそうなったで、だれも採掘をしないので、 やはり枯渇はしないかも。 □ 30年持てばOK まず大切なことは、これは、永遠の時間軸を考える必要はない問題だということです。 どうせ、あと100年もすれば、v6もv4もどーでもよくなって、 まったくあたらしいプロトコルが出てるでしょう。 いま(2008年)から100年前といえば、日露戦争であり ラストエンペラー即位ですよ。 伊藤博文や山県有朋が現役だった時代。 そんなときの通信技術(多分モールス通信???案外伝書鳩だったら笑うな)で、 今現在も使われてるものってあります? そんなの、博物館の中だけの話でしょ。 心配しなくても、IPv4は当然として、IPv6ですら、100年後はそうなります。 100年後なんて、脳波で通信しているかも。 よって、100年後のことなど今考える必要性は一切なし。 われわれが考えなきゃいけないのは、あと30年とかの歳月をどうやってしのぐか、 これだけなんです。 また、おなじようなことですが、IPv6原理主義者へ言っておくと、 JPNICが主張しているように、あと数年で枯渇すればともかく、 なんだかんだで2020年とかまで枯渇が延びれば、 それはそれで、もうそのときにはIPv6は最適解ではなくなっています。 そして、もっといえば、いまJPNICが言う2011年枯渇なんてどーせ延びます。 いま現時点では、ゼロベースで考えた場合のアドレス枯渇問題への対処法として 現実解としてIPv6が最適なのは認めますが、 それがあと10年以上も続くわけではありません。 2020年には、v6とは異なる画期的アドレス拡張法が出てるでしょう。 そして、どうせ枯渇は延びるので、この別の解決法が現実的になる可能性のほうが 高いでしょう。 ようは、何がいいたいかというと、 とにかく、後先よりも、今さえしのげればいいんですよ。 先のことは先のこと。 個人的には、あと30年をしのげればそれでOKだとおもいます。 そのころ、われわれは何歳になってます? あなたは何歳ですか? いまから30年前となると、1978年ですが、そのときの通信環境は?通信技術は? 携帯電話はありましたか?インターネットはありましたか? この30年でどれだけ進化したか。そして、今後30年でどれだけ進化するか。 30年後、何がどうなっているかぜんぜんわかりませんが、そのときはそのときでしょ。 われわれの後に続く世代が、 そのときはそのときで、 だれかなんかいい解決法を考えるんじゃないでしょうか(他力本願モード)。 □ コスト議論こそ重要 もうひとつ大切なことは、技術だけではなく、コスト面など、現実面もみることです。 たしかに、IPv6は技術的にはきれいな解決方法ですが、 しかし、移行コストなどを考えたとき、本当に最適な方法でしょうか? さらに、現実問題として、どうやって移行させるのでしょうか? JPNICの命令による「強制移住」ですか? それができるなら、IPアドレス税導入のほうがよほどマシです。 このあたりの、導入策の現実面まで考慮しない限り、枯渇問題は解決しません。 □ 互換性!!! 最後に、この場をお借りして皆様にお聞きしたいのですが、 本当に、IPv4下位互換で、128ビット・・・ではなくても、 たった33ビットでもいいから、 とにかく、いまよりもアドレス空間を大きくすることって、 絶対に不可能なんですかね。 たった1ビット増えるだけでいいんですよ。 どっかの余ったビットを持ってくることって 本当にムリ? ちなみに、ルータのファームなどの互換性はなくてもOKです。 必要なのは、アプリと設定の互換性。あとは全部取替必須でもOK。 もっと詳しく書くと、必要なのは、 ・ アプリケーションの互換性 ・ PC、ルータの「設定の」互換性です。 ・ TCPのみでいい。UDPはおろか、ICMP(=PING)すら不要。 つまり、 ・ 自分のプロバイダが v6 ready になる (プロバイダ内部は、どれだけ大規模な設備変更が必須でもかまわない。) ・ あたらしいIPスタックをインストールする (設定は、旧設定を引き継ぐのでいじらなくてもよい) ・ ブロードバンドルータのファームをアップグレードする (これも、設定は旧設定自動引き継ぎ。) この3つだけでイケるなら、なんとかなるでしょう。 とにかく、何とかしてください!!!。 私は、子供のころ、 NTSCカラー方式の賢さ(白黒に下位互換なんだぜ!)に感動し、 そして、互換性をまったく無視した(その割にはショボい)ハイビジョンを まったく否定しているのですが、 (NTSCのカラー電波は、従来の白黒専用テレビで見ても、 問題なく映った。賢いねぇ。) 本当に、下位互換のアドレス拡張って不可能なんですかね。 これ、絶対に絶対に絶対に無理? たとえば、PCの外は128ビット。しかし、 IPスタックで適当に変換がかかっており、 アプリからみれば、いままで同様32ビット、、、とか。 たとえば、127/8 (またはそのために割り当てられた専用のクラスA)の 怪しい空間がPC内部に突然出現し、その奥は、実はv6と奇妙な トンネルでつながっているとか、、、。 TCP専用ならこれでなんとかならないか? それで十分なんですよ。なぜって、アプリの互換性が一番キモだから。 それ以外だと、たとえば、セグメントとか。 いや、L2のセグメントじゃなく、x86のセグメントレジスタのほうね。 それ以外だと、昔の98のEMSとかバンクメモリとか。 とにかく、コンピュータのアドレス空間は、 無理やりな拡張って今までもあったわけですよ。 それに習い、インターネットのアドレス空間も無理やりに拡張できないか???。 TVのカラー化のときは、すげぇ無理やりなやり方ですが、 なんとか互換性を持たせましたよ。 レコードのステレオ化のときだって下位互換性があったし。 なんで、ネットは下位互換性がないんだ? 技術が退化してるよ。 なんとか、下位互換性を!!!。 とりわけ、アプリの互換性を!!!。 (アプリと設定さえ互換性があればあとはどうでもいい)。 私も、技術者の末席を汚しておりますので、これが困難なことはよくわかりますし、 第一、可能ならもう出てるだろ、とも思いますが、それでも期待したいですね。 どこまで期待したいですね。なにがなんでも期待したいですね。 正直、これが実現できれば、延々と続いているこのどうでもいい議論も、 そして注ぎ込まれた莫大な税金も、すべていい意味で無駄になります。 |