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【社説】

社会保障会議 『あるべき姿』を大切に

2008年6月20日

 政府の社会保障国民会議の中間報告は、将来の社会保障のあるべき姿を描いてみせた。現行の社会保障が劣化していることを踏まえ、その「機能強化」への改革を提言している点は評価できる。

 社会保障に関する政府の会合は過去にもあり、最近では二〇〇六年五月、官房長官主宰の「社会保障の在り方に関する懇談会」が報告書をまとめた。それは、自ら働いて自分の生活を支える「自助」や「給付と負担の不断の見直し」などを頻繁に強調していた。財政当局の圧力を意識し、萎縮(いしゅく)した内容といえよう。

 「国民会議」の中間報告は、財政の制約を念頭に置きながらも、社会保障のあるべき姿を提示した。社会保障への財源投入の割合が欧州先進国よりも低いことを率直に認めたのは初めてだろう。

 従来の社会保障制度では、非正規労働者が安全網(セーフティーネット)からこぼれるほか、産科・小児科を中心とする医師不足、救急医療体制の弱体化、介護分野における慢性的な人手不足が生じ、さらに将来の社会保障を支える若い世代の子育て支援も不十分など、社会保障が有効に機能していないことを指摘している。

 その改善のために「社会保障の機能の強化」を提言し、現役世代の雇用の確保や非正規労働者への社会保険の適用拡大、医療・介護サービスの充実や効率化、少子化対策の強化などを強調している。

 社会の変化や国民の社会保障への期待にこたえた内容だろう。

 本紙の国会議員アンケートでも八割以上が社会保障費の伸び率の抑制に反対を表明している。

 「機能強化」を図るには、財源確保が課題であり、それを随所で指摘し、増税の必要性をにじませている。政府が増税を前提に、社会保障の充実に向けてかじを切るよう提言しているといってもいいだろう。だが、増税の具体策には踏み込んでいない。

 「国民会議」がことし一月に発足したきっかけは、〇四年の年金法改正で決まった基礎年金の国庫負担割合を来年度までに三分の一から二分の一に引き上げる際、必要な財源二・三兆円をどのように賄うかだった。この差し迫った問題も置き去りにされた。

 秋には最終報告が出される。福田康夫首相は消費税率引き上げを「決断しなければならない時期だ」と言明した。社会保障の「機能強化」をする以上、財源問題は避けられない。国民に包み隠さず説明する必要がある。

 

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