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映画『靖国』上映中止を巡る波紋 有村・稲田議員講演会

有村「あくまでも手続き論」 稲田「マスコミはダブルスタンダード」

渋井 哲也(2008-06-12 17:30)
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 映画「靖国 YASUKUNI」(李纓監督)の公開が全国各地で始まっている。この映画を巡っては、国会質問で取り上げられたことで、様々な波紋が広がっている。そんな中、映画への助成金を問題視した有村治子参議院議員と稲田朋美衆議院議員の講演会(時局心話会主催)が11日、参議院議員会館で開かれた。有村議員と稲田議員は日本芸術文化振興会(文化庁所管の独立行政法人)の助成の是非、その手続きが適切だったのかを中心に述べた。

「イデオロギー論争には組しない」有村議員
 
有村議員(撮影:渋井哲也)
 3月27日に参院内閣委で質問をした有村議員はまず、「イデオロギー論争に組しない」と前置きしながら、靖国神社に関する言動に関しては、支持率が高かった小泉純一郎・元総理の靖国参拝ですら国論を二分していることから、

 「相応のリスクがあると分かった上で、表現の自由、言論の自由、信教の自由について私なりに理解した上で、かなり慎重に慎重を期して質問の準備をした。その際にこだわったのは、手続き論のロジック。自らの映画に関する主観は一切排除した。映画の内容についての主観や感想、善し悪しは、これまで一切述べたことはない。当然、反日や偏向という論評はしていない」

と、自らの政治的な主張を元に、映画への助成金を問題にしたわけではないことを強調した。そして、政治的、宗教的、商業的宣伝の映画には助成しないという選定基準があるとして、

 「なぜ(「靖国」を含めて)4本の映画が選ばれたのか議事録もない。文化庁はその論拠をちゃんと示せば済むこと。しかし文化庁は答弁に窮することが起き、振興会の選定はずさんな手続きの連続であったことが分かった」

と助成金のずさんな手続きを明らかにしたことを説明した。

会場からの質問を聞く有村議員(右)と稲田議員(撮影:渋井哲也)
 さらに、第三者を通じて登場人物の刀匠・刈谷直治さんに電話をし確認したところ、「刀匠のドキュメンタリーを撮影したい」との申し出に映画出演を承諾したが、この「靖国」の中で使われていたために、自らの出演部分をカットしてほしい、と刈谷さん自身が言っている、とした。

 この刈谷さんの意思は、「政治的介入がない。影響を受けたことはない」というもので、刈谷さんの地元の「高知新聞」をはじめ、朝日、読売、毎日、産経、東京の各紙が報じた内容が同じだったことも紹介した。

 パンフレットに掲載されている現役自衛官については無許可で撮影され、無断で使用されてることもわかり、プライバシーや信教の自由に配慮がない、と指摘した。

「映画への助成は妥当?」稲田議員

 稲田議員は「100人斬り」報道名誉毀損訴訟に取り組んでいた「中国ではちょっと有名な弁護士」で、中国の映画監督がインタビューをしたがっていたが断っていたことを、映画「靖国」の騒動で思い出した、という。

 「どんな映画であれ自分のお金で作るのは自由。でも助成金は問題だ」

と思い、主催する「伝統と創造の会」で「(映画への助成金を)問題にしよう」と言ったが、映画を鑑賞してからとの話になり、文化庁に申請。3月14日に試写会をすることになったが、後日、アルゴ・ピクチャーズが「稲田朋美とその勉強会には、絶対に見せたくない」というので、文化庁が“配慮”して、アルゴ・ピクチャーズ主催の試写会となった経緯について説明した。続けて、

稲田議員(撮影:渋井哲也)
 「試写会後、マスコミのインタビューに、『ある意味、偏向した映画だと思いました』と答えた。映画でクローズアップされている3人のうち、刈谷さんのほかは、台湾の国会議員と遺族の方。しかも、靖国参拝を違憲だと訴えた訴訟の象徴で、原告のメッセージを表している。そして、映画の最後には嘘だと分かっている『100人斬り』の写真を使っている」

と話し、政治的宣伝を意図した映画だと主張。しかし、インタビューで使われたのはほんの一部で、「テレビは怖い」とした。その上で、

 「表現の自由は、他の人権より優越な地位が認められている。それは、表現の自由が保障されていなければ民主主義の根幹が揺らぐ。しかし、この映画への助成が果たして妥当だったのか。それだけなんです」

と映画の内容についての議論と、助成の妥当性を区別していることを説明した。

 それに加えて、

 「今回、この問題に対して、『表現の自由』を主張するマスコミ、文化人らは、10年前に、(東京裁判や東条英機を取り上げた)映画『プライド』について、中国側の『侵略戦争を美化する』との抗議に反応して、公開中止を求めた勢力だ」

とダブルスタンダードを批判した。


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