【ワシントン及川正也】米海軍は23日、8月に神奈川県の米軍横須賀基地に配備される原子力空母ジョージ・ワシントン(排水量10万2000トン、原子炉2基)で22日、火災が発生し、水兵1人が軽度のやけどを負ったほか、23人が手当てを受けたと発表した。ハワイなどを経由して横須賀基地に向かうため太平洋を航行中だった。原子炉への被害はなく、放射能漏れはないというが、日本としては初の原子力空母受け入れだけに安全性に対する疑問の声が上がることも予想される。
ジョージ・ワシントンでは12時間にわたって総員配置となり、非常事態態勢が敷かれた。デビッド・ダイクホフ艦長は「(消火作業により)被害は効果的に抑えられた」との声明を発表した。
海軍によると、南米沖の太平洋上を航行中の現地時間22日午前7時50分ごろ、船尾の空調・冷蔵室と補助ボイラー室付近から出火。火は近くの数室に燃え広がり、鎮火まで数時間かかった。手当てを受けた23人は、高温下で長時間、消防具を着用した際にかかる「熱ストレス」の症状という。原子力推進施設への影響はなく、航行に支障はないという。火災発生当時は、別のフリゲート艦と洋上で補給作業中だった。
ジョージ・ワシントンはバージニア州ノーフォーク基地を4月に出港。火災は、寄港地のカリフォルニア州サンディエゴ基地に向かう途中で起きた。横須賀基地に配備中で退役予定の通常型空母キティホークとハワイで交代式を行った後、8月中旬に横須賀基地に到着する予定。
米海軍原子力空母ジョージ・ワシントンの火災について、防衛省は「米軍のこと」としながらも、横須賀への配備を8月に控えているだけに報道などで情報収集に当たった。ある幹部は「状況がよく分からない。出火原因や安全上の問題の有無について、今後外交ルートを通じて米側に問い合わせることになる」と話した。【松尾良】
■ことば
総額約50億ドル(約5170億円)をかけ建造され92年に就役した。全長約333メートル、全幅約84メートル、総排水量約10万2000トンの世界最大の軍用艦艇で、搭載機は戦闘攻撃機など約75機。原子炉2基を動力源に、約18年間核燃料の入れ替えなしに稼働が可能。最高速度は30ノット(時速約55キロ)超。今回の航海では約3200人が乗り組んでいる。
毎日新聞 2008年5月24日 東京夕刊