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【社説】

財政再建 まず骨身を削る議論を

2008年6月19日

 福田康夫首相が消費税引き上げについて「決断しなくてはいけない、とても大事な時期だ」と述べた。増税論議を避けない姿勢は理解できても、無駄や非効率が残る歳出の徹底削減が最優先だ。

 首相は「欧州に比べると(5%の税率は)非常に低い。5%でやっているから、これだけの財政赤字を背負っている」と述べて、増税の必要性をにじませた。一方で「国民世論がどう反応するか、一生懸命考えている」と語り、世論次第で消費税の扱いを先送りする含みも残した。

 これが「福田流」なのか。増税に一歩踏み出した気配もあれば、迷っている様子もうかがえる。来年九月までには行われる総選挙を控え、有権者の反発を恐れて腰が定まらない印象がある。

 年金や医療、介護など社会保障費が膨らんで、その財源手当てが待ったなしという事情は、多くの国民が理解しつつある。二〇〇九年度には基礎年金の国庫負担割合が二分の一に引き上げられ、約二兆三千億円が必要になる。ちょうど消費税換算で1%弱だ。

 その一方、政府の支出には、まだ相当な無駄があるのもたしかである。折から摘発された国土交通省北海道開発局の官製談合事件では、またも税金を使った官僚の天下り構造が暴露された。

 「骨太の方針2008」の素案は「ムダ・ゼロに向けた見直しを断行する」とうたっているが、言葉だけではむなしい。素案は「国の出先機関を大胆に合理化する」とも記したが、各論になると、霞が関は頑強に抵抗してきた。北海道開発局も道との二重行政が指摘されながら生き残っている。

 まず政府や官僚が、どう血を流して骨身を削るのか。そこが具体的に見えなければ、増税を訴えられても容易に納得しにくい。

 社会保障費は骨太06で「二〇一一年度までに一・一兆円の削減」を公約したが、素案は医師不足や後期高齢者医療見直しなどを削減の別枠扱いにする方針を示唆している。「新たな政策課題だから」(大田弘子経財相)というなら、なんでも別枠になりかねず、ていねいな説明が必要だ。

 増税策では、与野党の議員たちがたばこ増税を目指す超党派の議員連盟を結成した。一箱千円にすれば、約九兆五千億円の税収増という。需要減を割り引いても、かなりの額が期待できる。日本のたばこ税率は欧米に比べて低い。禁煙運動を盛り上げるためにも、検討してみる価値はある。

 

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