◎羽田の発着枠配分 地方路線拡充への配慮は当然
二〇一〇年に新滑走路ができる羽田空港の発着枠増加分の配分で、国土交通省が地方路
線の拡充に配慮した新たなルールづくりに乗り出すのは当然である。
羽田空港の発着枠は現行の年三十万回から約十一万回増やすことが可能となり、このう
ち国際線は当初の三万回から六万回に倍増させる案が浮上している。羽田再拡張の主な目的は、地方が求めていた国内線の発着枠拡大だったはずだ。このまま国際化へ大きく舵を切るなら地方路線への影響は避けられないだろう。
二〇一四年度に北陸新幹線が開業すれば、小松、富山空港の羽田便は減便になる可能性
が指摘されているが、それは鉄道と航空輸送の競争の結果であって、そうした競争とは別に、羽田発着枠の予期せぬ制約が路線維持の障害になるとすれば納得がいかない。
東京や神奈川など首都圏の自治体は羽田の国際線拡大を強く主張しているが、発着枠配
分については、空港を持つ地方の足腰を強くするという視点も重要である。県も国内線発着枠の十分な確保を国に訴え続けていく必要がある。
羽田空港の新滑走路がオープンする二〇一〇年を機に、航空各社は経営戦略を大幅に見
直し、国内外の航空ネットワークが再編されることになる。このため、国交省は高収益路線と地方路線をバランスよく配分するルールづくりを目指し、年内にも有識者懇談会を設置する。
新幹線開業による羽田便の影響については、小松空港でいえば、金沢開業の段階では南
加賀や福井県からの旅客需要が見込める。機材の小型化や運賃面の見直しなど競争による相乗効果が引き出されれば、すぐには大幅な減便とはならないだろう。
羽田の国内線発着枠が拡大すれば、国内では小型機材による多頻度運航の時代が到来す
るとの予測がある。そうなれば各路線ダイヤが増えて相互の連絡が密となり、羽田経由の乗り継ぎ需要が増える可能性がある。羽田とアジア主要都市が結ばれれば、地方空港から海外への乗り継ぎ需要も生まれるだろう。県は羽田便を取り巻く環境の変化にも目を凝らし、空港の経営戦略を綿密に練ってほしい。
◎骨太の方針危うし 役割を終わらせてならぬ
政府の経済財政諮問会議が、低炭素社会の構築、医師不足の解消、後期高齢者医療制度
における低所得者層の負担軽減、原油価格高騰対策など重要政策の指針「骨太の方針二〇〇八」の素案をまとめた。その過程で「『骨太』は役割を終えた」という財務省幹部の冷淡な物言いや、「昨年の参院選で敗北したのは諮問会議の意見によって選挙に勝てない政策ばかり行ってきたからだ」という自民党族議員の恨み節まで、外野席から何かと圧力がかかったようだ。
結論からいえば、骨太の方針の役割を終わらせてはならず、したがって経済財政諮問会
議を軽いものにしてはならない。
経済財政諮問会議は橋本内閣の行革によって生み出された。狙いは政策を官邸主導で実
現していくことだった。官に対して政治のリーダーシップを強めるために編み出されたのだった。
省庁再編に伴い、首相の政策構想やその遂行を助ける内閣府が創設され、民間の有識者
も入れて首相を議長とする内閣府の重要な会議として発足したのが経済財政諮問会議である。
小泉内閣がこれをフルに使い、改革を推し進めたのである。
これによって、政府の予算編成が劇的に変わった。いや、小泉内閣が積極的に変えたと
いうべきかもしれない。すなわち、かつての大蔵省である財務省が握っていた予算編成の強大な権限が官邸主導に切り替わったのである。首相がリーダーの経済財政諮問会議で骨太の方針がまとめられ、これに基づいて予算編成が行われることになったのである。
族議員と官僚による主導から、官邸による主導へ、やっと変わりかけたというのに、定
着しないうちにご破算にしようとする動きが活発になったのである。そうした動きは発足当初からあったそうだが、それは要するに族議員・官僚主導への回帰をはかるものであり、許すわけにはいかない。参院における与野党の勢力逆転は官邸主導を難しくしたが、だから、やめたらよいということにはならないのである。