政府がまとめた経済財政運営の基本方針「骨太の方針08」素案について18日、自民党内から歳出削減方針を見直すよう求める意見が噴出した。歳出圧力の背景にあるのは、次期衆院選への危機感。小泉政権下で官邸の力が強まった予算編成の主導権を奪い返したい思惑も絡み、「財政規律の堅持」か「歳出増」かを巡る綱引きが本格化してきた。【三沢耕平】
「地域経済を支える公共事業はこれ以上減らせない」「社会保障費を毎年2200億円抑制する方針は見直すべきだ」。素案を討議するため、自民党が18日開いた政務調査会全体会議は約3時間に及び、ベテランから若手まで30人を超える議員が次々にマイクを握って歳出削減路線に「待った」をかけた。財政規律の堅持論を訴えたのは2人にとどまり、「国・地方を通じて最大限の歳出削減」と明記した素案への不満の大合唱となった。
この後の党国土交通部会関係合同会議は、素案にある公共事業費の3%削減の見直し要求の決議までまとめた。福田政権下で歳出削減路線を骨抜きにしようとする動きが一気に顕在化した。
党内論議に火を付けたのが、消費税率引き上げは不可避との考えを示唆した福田康夫首相の17日の発言。
引き上げ論者がそろう、与謝野馨前官房長官らを囲む勉強会で、野田毅元自治相や園田博之政調会長代理は18日、「妥当な発言だ」と評価した。会合後、与謝野氏も記者団に「自民党が過去に約束したことからも、理にかなっている」と語った。
これに対し、若手中心の党内グループ「新しい風」の会合で、会長の武部勤元幹事長は「北海道開発局の職員逮捕など不祥事が続く状況で増税などできるわけない」と訴え、引き上げ論を激しくけん制した。津島派の幹部会では、党税調会長を務める津島雄二会長が「今の段階では、首相は税制は頭に入れず、政策をどんどん打ち出していただくのがいい」とクギを刺した。
首相は同日夕、官邸で記者団に、自らの消費税発言に関し「ものには順序がある。もろもろのことを詰めていき、その財源がどうなるかを詰めないといけない。(消費税を)どうするかはその先の話だ」と強調し、事態の沈静化に努めた。
【関連ニュース】
消費税:首相の増税発言、決断には曲折も 党内対立先鋭化
骨太方針08:素案…歳出抑制策、踏み込み不足
読む政治:増税か、上げ潮か 自民、消費税論議が本格化
自民党財革研:「10年代半ばまでに消費税10%」を提言
たばこ:1箱千円? 大幅増税論が活発化 議連も発足へ