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連続幼女誘拐殺人:宮崎死刑囚・刑執行(その1) 最後まで謝罪なく

 ◇絞首刑を再三批判 「薬物注射」導入を主張

 連続幼女誘拐殺人事件の宮崎勤死刑囚(45)の死刑が17日、東京拘置所で執行された。判決確定から2年余り。宮崎死刑囚は再審請求の意向を示し、死刑制度を批判する手紙も公表したが、鳩山邦夫法相は早期の執行を決断した。社会を揺るがした特異な事件の発生から20年。法廷で不可解な発言を繰り返した男からは、最後まで反省や謝罪の言葉は聞かれなかった。

 「絞首刑は残虐」。宮崎死刑囚は、月刊誌「創」の篠田博之編集長にあてた手紙の中で現行の死刑制度を批判する持論を再三展開した。

 同誌06年7月号によると、宮崎死刑囚は現行の絞首刑について「踏み板(床板)がはずれて下に落下している最中は、恐怖のどんぞこにおとしいれられるのである(人権の軽視になってしまいます)」と主張。薬物注射による執行の導入を訴えた。

 また、07年5月の手紙では「この国の現行の死刑執行方法だと、死刑確定囚の人は、刑執行時は恐怖とたたかわねばならず、反省のことなど考えなくなる」(同誌07年8月号)とも述べていた。

 篠田編集長によると、宮崎死刑囚からはほぼ毎月、手紙が届いた。幻聴を訴えたり、拘置所内で放送されたラジオ番組の内容を詳細に記すこともあった。しかし、10年以上にわたる300通以上の手紙の中で、被害者や遺族への謝罪はなかったという。

 執行を聞いた篠田編集長は「全く想定していなかった。極めて異例の早い執行だ」と驚きを隠さなかった。「彼は病気の影響もあって無頓着で、自分がどういう境遇にあるのか、よく分からない様子だった。死刑確定の意味についてもしっかり説明は受けていないようだった」と振り返った。

 06年1月に最高裁で上告が棄却された後、東京拘置所で面会した関係者に対し、宮崎死刑囚はほおづえをつきながら「(死刑は)何かの間違い」と語った。再審請求する意向を周囲に示していたという。

 なぜ、あのような事件を起こしたのか。この疑問を解こうと、臨床心理士の長谷川博一・東海学院大教授は最高裁判決の前日から約2週間の間に8回、宮崎死刑囚と拘置所で面会した。だが、公判で「(犯行時に)ネズミ人間が出てきた」などと不可解な供述をしていた宮崎死刑囚は、面会でも「常識では通用しない答えが多い」(長谷川教授)。反省の言葉を口にすることもなかったという。

 ◇元取調官は「思い複雑」

 埼玉県警捜査1課の取調官だった佐藤典道さん(67)は「事件の悲惨さとご遺族の気持ちを思うと死刑執行はやむを得ないと思うが、40日間宮崎という男を取り調べた者としては複雑な思いがある」と語った。

 宮崎死刑囚は取り調べに淡々と応じていたという。「感情をあまり表に出すことがなく、受け答えに心が入っていない印象だった。『なぜ』と聞いても『たまたま』などと答える。反抗するわけではなかったが、彼の心の内に迫り、真実を語らせるのに苦労した」と振り返った。

 警視庁捜査1課の元捜査員は「執行まで長かった。遺体を切断するという残酷さ、せい惨さが頭を離れない。あってはならない事件だった。被害者の女の子も生きていれば成人している年齢だ。ご遺族も悔やんでも悔やみきれないだろう。死刑は当然だと思っている」とかみしめるように話した。

 ◇20年がたっても癒やされぬ遺族

 事件から月日がたち、被害者遺族の周辺も大きく変わった。

 東京都江東区の被害女児(当時5歳)の遺体が発見された埼玉県飯能市内の霊園には、「子供が犠牲になる事件がなくなるように」と石碑が建てられている。管理人の男性(66)は17日、「午前11時ごろ、ラジオで死刑執行を聴いた。お花を供えようと準備している。ずいぶん長く時間がかかったが、これで女児も安らかに眠れるだろう」と話した。

 女児が住んでいたアパートの一室には、現在も父親名の表札がかけられ、ひっそりと静まり返っていた。

 埼玉県飯能市の被害者の女児(当時7歳)の自宅は、住宅地の一角にある。近所の人の話によると、現在は父親と兄の2人で暮らしているという。17日午前は不在で、近くに住む女性は「あれから20年たつと思うと複雑な心境だ」と話した。

 また、当時4歳の被害女児が住んでいた埼玉県入間市内の団地は、表札が別の住民のものに変わっていた。団地に住む住民によると、女児の家族は2、3年前に引っ越したという。住民たちは一様に「事件のことは思い出すのでしゃべりたくない」と語り、今も癒やされない様子だった。

毎日新聞 2008年6月17日 東京夕刊

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