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歌舞伎:六月大歌舞伎(歌舞伎座) 鬼気迫る吉右衛門の花道の出

 昼の「新薄雪物語」は「花見」から「合腹」まで。子を助けるため、父2人が犠牲となる「合腹」に見ごたえがある。伊賀守(吉右衛門)の花道の出が鬼気迫り、幸四郎の兵衛とのやりとりに抑制された情感が漂う。兵衛の妻、梅の方の悲しみを芝翫が繊細に描き、3人笑いには、それぞれの思いが出た。富十郎の大膳、段四郎の団九郎に存在感があり、魁春の松ケ枝、福助の籬(まがき)、染五郎の妻平、芝雀の薄雪姫、錦之助の左衛門とそろう。

 最後が福助の芸者、染五郎の鳶頭の華やかな「俄獅子(にわかじし)」。

 夜の最初が「すし屋」。吉右衛門の権太は前半でならず者らしいすごみを出し、手負いとなって心情を明かす後半との差異を際立たせる。最期にはすべてが徒労に終わった悲しみを見せた。芝雀のお里が一途(いちず)。染五郎の弥助は強さある造形。歌六、段四郎、吉之丞が好演。

 次が「身替座禅」。仁左衛門の右京の柔らかみある色気と、段四郎の玉の井の夫を思うあまりの滑稽(こっけい)さがみどころ。錦之助の太郎冠者は実直さを出した。

 続いて鈴木泉三郎作「生きている小平次」。太九郎(幸四郎)が妻のおちか(福助)の情人、小平次(染五郎)を何度殺しても、小平次は現れる。小平次が亡霊と明らかにした演出(幸四郎)で、夫婦の葛藤(かっとう)は浮き出たが、つきまとう小平次の不気味さは薄れたように思う。

 最後が芝雀、錦之助、歌昇の「三人形」。奴の歌昇の動きが鮮やか。27日まで。【小玉祥子】

毎日新聞 2008年6月18日 東京夕刊

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