※画像は再生した指
切断して消失した男性の指が、爪や神経、さらには指紋まで再生して生えてきたというニュースです。
それも、豚の細胞を利用した粉を傷口に塗っただけで、勝手に生えてきたというのだから驚きです。
夢のような信じがたい話ですが、BBC NEWSが映像と共に取り上げており、アメリカのピッツバーグ大学が研究中のものだそうです。
いったいどんな粉なのでしょうか。
ホビーショップに働くリー・スピーバク氏が指を切断したのは、模型の飛行機のプロペラに指をうっかり入れてしまったためでした。
1cm以上切断されてしまい、しかも切断された部位はどこへ行ったのかもわからない状況でした。
写真に写る指の切断面はくっきりと映っており、医師から指は一生切断されたままだと告知されたことに頷ける状態です。
ところがこの69歳のスピーバク氏が見せてくれた指先には、驚くことに指がしっかりとあるではないですか。
細胞組織、神経、爪、皮膚はおろか、なんと指紋まで全て揃っています。
いったいどうやって切断した指が戻ったのでしょう?
驚くべきことに、指を移植をしたわけではありません。彼の指はまた生えてきたのです。
「ピクシーダスト」(妖精の粉)と彼が呼ぶある粉を使いました。
器官再生に関する薬剤分野で働く、スピーバク氏の兄弟であるアランが、彼にそのパウダーを送ってきたのです。
スピーバク氏は10日間ほどそのパウダーを指先につけました。
「2日目につけたときには、すでに元に戻り始めていることに気づきました。毎日少しずつ伸びて完全に元に戻ったのです。大体完全に戻るまでに4週間かかりました。」
現在彼は完全に、指の感覚があり動くそうです。
さていったいこの魔法の粉はいったいどういうものなのでしょう?
この「ピクシー・ダスト」はピッツバーグ大学の研究室から来たもので、そこでは細胞外マトリックス(エキストラ・セルラー・マトリックス)と呼んでいます。
この分野の第一人者であるスティーブ・ベイディラック博士は、過去数年に渡り、豚の膀胱の層になった部分の細胞をこすり落としているそうです。残りの細胞組織は酸に漬けて、その後乾燥させるそうです。
シート状にしたり、粉状にできるそうです。
シンプルなプロセスのようですが、もちろん科学的には複雑です。
スティーブ・ベイディラック博士が説明するには、
「人間の身体には様々なシグナルがあります。その中で傷を形作るというもの、そしてそ細胞組織の再生に良いというシグナルなどを見つけました。一つの考え方として、この細胞外マトリックスから傷を形作るために刺激するものを取り除き、代わりに構成し再生していくというシグナルを残したのです。」
要はこの細胞外マトリックスを傷口につけると、細胞を刺激して傷を作らせず再生を始めるということのようです。
このテクニックが極められれば、重傷を負った指だけでなく、大火傷や臓器の損傷なども治療できることになります。
博士はまた、10年以内に骨の再生やその周りの組織の再生に成功しているのではとみています。
もうすぐブエノス・アイレスの食道ガンの女性に臨床実験が行われるそうです。
そのほかに火傷による皮膚の損傷などにも効果があることを期待しています。
現在ではまだまだ臨床実験の段階ですが、指が生えてきて再生したという治療には驚くべきものがあります。
映像はコチラから見られますが、切断後の指を含むので閲覧には注意ください。
今後の続報が待ち遠しいニュースですね。
BBC - The man who grew a finger より
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