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【今日の読み物(スコープなど)】スコープ 医学部定員 増加方針 医療崩壊歯止めへ転換2008年6月18日 紙面から 政府は十七日、医師不足による医療崩壊を食い止めるため、大学医学部の定員削減を定めた一九九七年の閣議決定を撤回し、医師増員に政策転換することを決めた。ただ、医師養成は時間がかかり、即効薬にはならない。当面は地方への医師派遣制度の拡充など、地域医療を守る対策が急がれる。 (後藤孝好) 舛添要一厚生労働相は記者会見で「医師数は十分で、偏在が問題、と言ってきたが現実はそうではない。週八十−九十時間の医師の勤務を普通の労働時間に戻すだけで、勤務医は倍必要だ」と指摘。厚労省が医師数の抑制を続けてきた政策の誤りを認めた。 医師は毎年、新たに資格を取得する約七千七百人から退職者を引いても年間三千五百人から四千人増加。厚労省は医師の全体数を見て「数は足りている」と繰り返していた。 だが、現実には医師は都市部に集中し、へき地など地方は医師が足りず、医療崩壊が深刻化。人口十万人当たりの従事医師数は、宮城県の黒川地域七十人、北海道の根室地域八十四人など、地方の多くは全国平均の二百六人を下回っている。最も多い東京都の千代田区など五区は千百七十三人で、地域間の格差が非常に大きい。 全体では医師が増えていても、診療科別の偏在がある。産婦人科や外科などは激務に加え、医療行為による訴訟リスクが高いために敬遠され、なり手が見つからない。 産婦人科は九四年には一万千三百九十一人だったが、二〇〇六年には一万七十四人に減少。地方では、産婦人科の休診や閉鎖が相次ぎ、自宅から遠く離れた病院でしか出産できないことが社会問題化しており、医学部定員増への期待は大きい。 ただ、医学部の定員を増やしても、一人前の医師になるには研修を含めて約十年が必要とも指摘される。直面する医師不足に対しては即効性はないが、厚労省幹部は「医療の充実に向けて大きく政策転換するという象徴的な意味がある」と述べる。 政府は、医師養成増を急ぎながら、地方への医師派遣の強化や、出産・育児で休職する女性医師の復職支援、医師の負担軽減のための診断書作成などを補助する事務員の活用−などの政策を進め、医療崩壊に歯止めをかける方針だ。
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