予想以上の人出を集めて開業した東京メトロ副都心線。沿線の商戦を盛り上げるなど開業効果は大きいが、肝心の列車ダイヤは四日連続で乱れた。定時運行は鉄道の基本だ。足元をしっかり見直せ。
滑り出しは上々だった。初日の乗客は約五十万人、二日目も約三十万人と当初予想の約十五万人を大幅に上回った。今週からの平日運行では第二山手線として通勤・通学客の利用も拡大するとみられていた。
ところが運行は大幅に遅れ乗客の失望を買った。初日と二日目は車両トラブルが起き三日目は運行管理ミスが発生、四日目は車庫付近で停電と不具合が続出した。
同社は複数私鉄との相互乗り入れの難しさに加え、運転指令も現場も不慣れだったと釈明する。だがそれらは開業前に解決しておくべきことだ。明らかに準備不足といえる。もう一度、態勢をしっかりと立て直してもらいたい。
副都心線は埼玉県和光市駅と東京・渋谷駅間約二十キロを結ぶ。和光市で東武東上線と、小竹向原で西武有楽町線・池袋線とそれぞれ相互直通運転を行っている。
和光市−渋谷間は急行なら二十五分。また池袋−渋谷間は急行で十一分だ。JR埼京線や湘南新宿ラインとほぼ同じ時間で、山手線よりも数分早い。乗り換えなしで直行できる点が評価されており、新線に対する期待は高い。
とりわけ池袋、新宿、渋谷の三大商業地では百貨店競争が活発になった。池袋では西武、東武両百貨店が異例の共同作戦を展開したところ売り上げは好調だった。
いち早く開業効果を勝ち取ったのが新宿だろう。新宿三丁目駅に直結する伊勢丹と、地下通路で結ばれた高島屋はともに大幅な売上高増になったという。京王、小田急両百貨店なども懸命である。
将来性では渋谷が有望だ。新駅は大きな吹き抜けで自然換気方式を採用するなど斬新な設計。建設中の超高層ビルが完成する二〇一二年度には東急東横線が地下に入り副都心線と直結する。交通ネットワークは一段と広がっていく。
新線開業でJR東日本は年間三十億円強の減収を予想するが「全体として鉄道利用客が増えればいい」と鷹揚(おうよう)に構えつつ、新宿駅南口の再開発に力を入れている。
開業日には震度6強の岩手・宮城内陸地震が発生した。トンネルの柱の耐震補強工事は完了したというが電気・通信設備や火災対策にも万全を期してもらいたい。
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