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社説2 たばこ1箱500円ならいかが(6/18)

 病気の予防や税収拡大のため、たばこ税を引き上げようという議論が高まっている。増税により1箱300円のマイルドセブンなら1000円にするための議員連盟も生まれた。

 喫煙者は今や社会的に弱い立場にある。だから増税をしやすいという発想があるなら、それはイジメに近い。一気に1箱1000円にするというのも愛煙者に厳しいかもしれない。

 とはいえ、喫煙者だけでなく周りの人の健康被害も考えると、増税による禁煙の応援は必要だ。私たちは2年前のたばこ増税の前に、早くから増税を主張した。今回も、1箱500円程度になるような増税なら、やむをえないと考える。

 たばこの煙は約200種類の有害物質を含み、肺気腫や肺がん、心臓疾患の原因になるが、やめられない人はなお多い。男性の喫煙率は40%弱で、米国(同24%)や英国(同27%)を大きく上回る。

 原因はやはり値段の安さにある。財務省によると、英国では20本入り1箱が1297円(うち、たばこ税などが802円)、米ニューヨーク市は759円(同396円)。174円という日本のたばこ関係税は著しく低い。

 これは日本たばこ産業や葉タバコ農家、販売店への政治的配慮が働いてきたためだ。最近、政治家から増税論が出てきたのは、来年度の消費税増税を避ける狙いがある。

 年金制度改革により来年度から国庫負担の拡大が決まっている。消費税1%相当分の必要財源、約2兆3000億円をほかから調達しようとすればたばこ税しかないというわけだ。

 国と地方のたばこ関係税の税収は今年度見通しで2兆2000億円。「1箱1000円」が実現し、需要があまり落ちなければ、増収効果は8兆円以上、と議員らは期待する。

 だが大幅に増税すれば喫煙者が減って税収はいずれ減るかもしれない。消費税増税までの「つなぎ」としてならともかく、年金の安定財源としてたばこ税に期待するのは無理がある。年金財源問題とは基本的に切り離して考えるべきだ。また他人に迷惑をかけず喫煙する人の権利も考える必要がある。マイルドセブン1箱、まず500円でどうだろう。増収効果は2兆4000億円程度である。

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