官側が談合を主導する官製談合の体質が国土交通省の隅々にまで染みわたっているのではないか。本省の現職局長が、出先機関の北海道開発局の部長時代に官製談合に関与していたとして競売入札妨害容疑で札幌地検に逮捕された事件だ。
直接の容疑対象は、開発局が05年に発注した2件の河川改修工事。指名競争入札だったが、地元の建設会社に天下りした開発局OB2人と共謀し、特定の業者に落札させる談合の調整をしたという。このうち1件の予定価格に対する落札率は96・01%と極めて高い。
発注側が談合を主導し、業者に公共工事を高値で落札させ、見返りにOBを天下りで受け入れさせるという典型的な官製談合の構図だ。その分、税金が余計に業者の懐に流れ、つけは納税者である国民に回ってくる。税の無駄遣いがこれほど問題になる中、国民の怒りを買う許し難い犯罪だ。
逮捕されたOBの一人はかつて同じ部長も務め、「部長の間で代々、談合の手法が引き継がれていた」と供述しているという。北海道開発局では5月、別の部の元部長や現職課長ら3人が農業土木工事をめぐる官製談合の疑いで逮捕されたばかりだ。これでは、局ぐるみで違法行為が日常的に行われているのではないかと疑わざるを得ない。この際、地検には徹底した捜査を尽くし、うみを出し切ることを望みたい。
今回の事件がとりわけ深刻なのは、国の公共事業の8割を扱い、かつ談合防止へ向け入札制度改革に率先して取り組むべき国交省で官製談合が起きていたことだ。しかも、官製談合の弊害が叫ばれて官製談合防止法が制定された02年以降も官製談合が恒常的に繰り返されていたというのでは、言語道断だ。
北海道開発局では02年、鈴木宗男元北海道・沖縄開発庁長官の受託収賄事件の背景として、検察側から官製談合の問題が指摘され、これを受けて公正入札調査委員会の設置など再発防止策を導入していた。しかし、逮捕された局長もこの委員を務めていたというから、とても防止効果が期待できる代物ではない。
事件の背景には、公共工事の比重が高い北海道の事情もあるだろうが、一出先機関の不祥事ととらえるべきでないのはもちろんだ。公正取引委員会は昨年、中央省庁では初めて国交省に対し、水門設備工事で官製談合防止法を適用する措置を取った。今年春には、同省のキャリア職員2人が予定価格を漏らした疑いなどで大阪地検に逮捕された。国交省の不正続出は目を覆うばかりだ。
「再発防止の対策を講じることが、地に落ちてしまった省の信頼を回復する唯一の道だ」。冬柴鉄三国交相は17日の記者会見でそう語った。国交省が官製談合体質を断ち切ることは、もはや待ったなしだ。
毎日新聞 2008年6月18日 東京朝刊