高校野球の特待生問題、力士の傷害致死事件、ドーピング……。プロ・アマ問わずスポーツ選手が抱えるトラブルを法律的に解決する方策を考えようと、大阪弁護士会は「スポーツ・エンターテイメント法実務研究会」を発足させた。閉鎖的と指摘されるスポーツ界に風穴を開け、「契約の理念」を根付かせることも狙いにしている。総勢100人を超す法律の専門家が紛争処理にどこまで貢献できるのか、取り組みに注目が集まる。
研究会は、元ヤクルトの古田敦氏が92年、プロ野球の契約更改で初めて代理人契約を結んだ辻口信良弁護士が発起人代表を務める。辻口弁護士を中心に約10人の有志が「スポーツ選手の地位向上」を目指して設立した「スポーツ問題研究会」(91年発足)が母体となった。
代表選手の選考を巡る競技団体内のトラブルなどアマスポーツに関する紛争処理を研究するほか、監督・コーチによる理不尽ないじめや体罰問題にも取り組む方針。「競技団体やチーム内での嫌がらせを恐れて泣き寝入りしている選手も多い」(辻口弁護士)とみられ、気軽に相談してもらうために研修会や講演会などの広報活動にも力を入れる。
研究会設立には、当初見込みの40人を大きく上回る104人の弁護士が賛同した。その中心は若手弁護士だ。背景には、司法試験合格者の急増に伴う過当競争の中、弁護士業務の領域拡大に寄せる期待もある。辻口弁護士は「法律の光を当てることで、なれ合いでトラブルを処理する風土を変えたい」と話している。問い合わせは研究会事務局の太陽法律事務所(06・6361・8888)。【川辺康広】
毎日新聞 2008年6月17日 15時00分(最終更新 6月17日 15時00分)